28 降ろすべき物。 ページ29
side.M
レポートを書き終えて時計を見ればまだ11時を過ぎたばかりだった。
寝るにも、この時間じゃ眠気もない。
珈琲でも飲もうと下に降りようとした時、ノック音が聞こえる。
「はーい」
ある程度、見当はついているから敢えて言う事もないだろう。
「潤くん、ちょっといい？」
扉を開ければ風呂上がりの和がバスタオルを肩に掛けたままコーヒーを持って立っていた。
「バスタオル置いてこれば良かったのに…」
「まぁ、後でちゃんと入れときますから」
和はベットに腰掛けて俺はさっきまで座っていた椅子に座る。
俺のパソコンに目を向けると、話題はレポートの話になった。
「レポート、ですか…」
「和は？やっぱ、実習ばっかなんだろ？」
「最近は殆どそうですよ」
二人して近況を話しているが、本当にしたかった話ではないことはコーヒーを持ってきている時点で分かっている。
「雅紀は、あれでいいのかよ」
つい強くなってしまう口調はどうしようもないものかもしれない。
「相葉さん、翔ちゃんもお互い探り合ってるんでしょうね」
分かってるなら助けてやればいいのに、
なんて事は言えない。
和も何か思うことがあるのだろう。
「お前はいつも俺の事だって騙してんだから」
「あら、身に覚えのない話しだこと」
「まさか本気で認めたわけじゃないだろ、和だって」
俺の問いかけに中々返事は返って来なかった。
「この道はいつか通るべき道なんです。それが今なのか、もう少し後なのか。それだけのことです」
決定的な事は言わずに言葉を濁したが、要するに見えてるってことか。
それ以上答えることはなくて、空になったマグカップを持って立ち上がった。
部屋を出ていく直前、小さな声で言った。
「潤くんも分かってるでしょ？
これを乗り越えられなきゃ、翔ちゃんはずっと何も出来ない自分に悩み苦しむことが」
「それを見て、大野さんが俺たちに申し訳なさそうな顔することも」
それは和も口にしたくなかったのだろう。
俺たちは何も出来ないと、大野さんには適わないと、何度も思わされた和がだからこそ。
「翔ちゃんは要らない荷物を持ったままなんです。それは、もう降ろしていいはずなのに」
一番近くで見ていた俺は、同じ気持ちを抱き、和の心の広さを知った。
「降ろさないと翔ちゃんも大野さんも苦しいままじゃないですか」
それは切実な願いだった。
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未翔(プロフ) - 蒼星さん» 読んで頂きありがとうございます。そう言って頂けると有難いです。出来るだけ更新したいと思いますので、これからもよろしくお願いします。 (2019年5月26日 12時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
蒼星(プロフ) - 初めまして。毎回更新を楽しみに拝読しております。わざわざ更新出来ない旨のご連絡ありがとうございます。読者は作者様から与えて頂くもので楽しませてもらっていますので多少の待ち時間は気にならないです。お気になさらずこれからも楽しみに待っています。 (2019年5月26日 11時) (レス) id: c0123debb3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2019年5月19日 21時
