第１章−２− ページ19
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「おはようございます」
扉を開けると、取り付けられた風鈴が
チリンと涼やかな音を立てる。
「あ、翔ちゃん。おはよう」
テーブルに座って文庫本を読んでいた雅紀が
片手を挙げて挨拶をしてくる。
Tシャツにジーンズというラフな格好だが、
シャツのサイズが微妙に小さく、
そのボディラインを浮き立たせているので
朝っぱらからやけに退廃的な
雰囲気を醸し出している。
「おはようございます、雅紀さん」
挨拶を返した櫻井は、
カウンター席に腰掛けた。
「ブレンドをお願いします」
カウンター内でコーヒー豆をひいている
マスターは、気を付けなければ気付かない
ぐらいわずかに頷いた。
大野クリニックが入っているこの
『梓ビル』のオーナーでもあるという
このマスターが喋るところを、
ここに通い始めてから３週間近くに
なるというのに、
櫻井は未だに見たことがなかった。
サイフォンがコポコポと音を立てるのを
聞きながら、櫻井はカウンターの一番奥に
置かれた小さなテレビに顔を向ける。
この店では朝の時間帯だけ、
サラリーマン向けなのか
ニュース番組を流していた。
(未だにサラリーマンが客に来ているのを
見たことはないが)
顔をテレビの方向に向けたまま、
櫻井は目だけで動かして店内を見回す。
「奈美ちゃんなら、もういないよ。
ちょっと前までここでモーニング食べてた
けど、さっき大ちゃんに呼ばれて
行っちゃったから」
唐突に背後から声を掛けられ、
櫻井はびくりと体を震わせた。
振り返ると、いつの間にか
隣のカウンター席に雅紀が座っていた。
「あ、あの……なんのことですか？」
「ごまかさなくていいって、最近、毎朝
勤務前にここに来るようになったの、
奈美ちゃん目当てでしょ」
雅紀は唇の端を上げる。
「いえ、そういうわけじゃ……。
ただ、あっちの病院に回診に行く前に
ちょっと一息つくのにちょうどいいからで」
櫻井はしどろもどろに答える。
大野クリニックで手術を受けた患者は、
術後はこのビルから徒歩で５分ほどの所に
ある『青山第一病院』という総合病院に
入院し、そこで術後の経過を
みることになっていた。
高級住宅街の一角に立つその病院は
一見したところは普通の中堅病院なのだが、
最上階に専用のエレベーターを使わなければ
ならない全室個室のVIP用秘密病棟がある。
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未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
