__ ページ15
・
「政治家だけじゃない、健康不安情報が
流れただけで株価が大きく下がるような
大会社の役員、世間が大騒ぎするような
芸能人など、自らの病気を
知られないように治療を受けたいっていう
ニーズはかなりあるんだ。だからここは、
外見からは医療機関とは、分からないように
なっているんだよ」
「けれど、そういうVIPなら、もっと
設備のいい病院で質の高い治療を
受けたいと思うんじゃないですか？」
大野達の気分を害する可能性に
思い至りながらも、その質問が口をつく。
しかし、大野が
不機嫌になることはなかった。
それどころか、大野の顔には
笑みが浮かんでいた。
「ここの医療レベルは、
どんな大病院にも負けないよ。
今からそのことをご覧に入れよう」
そう言って手術室から出た大野は、
すぐそばの洗面台で手指消毒を始める。
「何してるんだい。君が第一助手なんだ、
早く手を洗って準備を整えてくれ」
「あっ、はい」
大野に促された櫻井は、
小走りで隣の洗面台に向かった。
ヨード液を手にかけ、
ブラシで丹念に爪の間まで洗いながら、
櫻井はじんわりと体温が上がっていくのを
感じていた。
あの事件から手術に入ることはなかった。
普通ではない状況だが、
また手術に参加できることが嬉しかった。
消毒を終え、滅菌ペーパーで拭いた手を
胸の前に掲げたまま手術室に戻ると、
奈美が滅菌ガウンを差し出してくる。
「ありがとうございます」
礼を言ってガウンを着込んだ櫻井に、
奈美が滅菌手袋を渡してくる。
「頑張ってくださいね、櫻井先生。
智さんに振り落とされたいように
気をつけてください。私も機械出しとして、
できるだけサポートしますから」
「え、振り落とされるって……」
櫻井が聞き返そうとすると、奈美は
胸の前でコケティッシュに両手を握り、
「ファイトです！」と言って、
機械台の前へと戻っていった。
奈美の可愛らしい仕草に
思わず緩みかけた口元に力を込めた櫻井は、
ラテックス製の手袋をはめて手術台に急ぐ。
既に大野は執刀医の位置に立ち、
滅菌カバーの穴からのぞいた術野を
見下ろしていた。
櫻井は手術台を挟んで大野の対面、
第一助手の一郎に立つ。
雅紀により術野の消毒は終わっている。
いつでも執刀を開始できる状態だった。
「松潤、麻酔は問題ないな？」
大野は横目で松本に視線を送る。
松本は無言のまま頷いた。
「それじゃあ始めよう。お願いします」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 756人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
未翔(プロフ) - あきさん» 読んで頂いてありがとうございます！ここから更に急展開ですのでお見逃し無く！！ (2021年5月25日 22時) (
レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
未翔(プロフ) - shioribaron0307さん» ありがとうございます！ (2021年5月25日 22時) (レス) id: b3cb87418b (このIDを非表示/違反報告)
あき(プロフ) - うわぁ〜急展開！！ワクワクしますね。続きを楽しみにしてます。 (2021年5月25日 15時) (レス) id: de45e6159d (このIDを非表示/違反報告)
shioribaron0307(プロフ) - お話面白かったです。続き楽しみにしています！ (2021年5月22日 14時) (レス) id: 7628593eb6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：未翔
| 作成日時：2021年5月15日 12時
