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『あぁぁっ!!』
「まったく……伊野尾くんだけだよ。俺に 愛撫されてるのに、他の男の名前を呼ぶの。
他の女は、頭の中 "気持ちいい"だけになって コロッと堕ちるのに」
「さすが、俺の愛した男は ひと味ちがうね」と
くすくす笑いながら 激しく腰を打ちつける 高木。
『んっ、たか、き…?』
おこってるの?よろこんでるの?たのしんでるの?
気になるけれど
こころの中に "きもちいい" と "薮" しかない俺には
高木の表情が どの感情を現しているのか 分からなくて、
ぱち、ぱち、ぱち、
『あっ…あんっ…』
「こんなに激しく揺さぶられても、まだ 頭の中から 薮君 消えないの?」
『や、ぶ…?』
「チッ、まだかよ」
『あ、あぁぁん!!!』
どうして高木が、こんなに激しく 腰を打ちつけるのか 分からなくて、
「俺、薮君が 嫌いだよ。伊野尾くんの ソウルメイトで、心 通じ合って、伊野尾くんと 2人でひとつになっちゃってる 薮君がさ」
『きらい…』
「でもね、それ以上に 伊野尾くんが憎くて 仕方ないよ。
俺が 薮君のこと嫌いなの知ってて、自分と薮君のために 俺を使おうとしてる 伊野尾くんが。
薮君なんかのために、俺に 抱かれてる 伊野尾くんが!!!憎くて仕方ないよ!!!!」
物事の "良い" "悪い" の分別が 分からなくて、
『やぶは、おれの、しんぞうだから』
「、」
『ないと、いきていけないの』
俺の くちびるからは
本音だけが、ぽろぽろと こぼれおちていく。
「…知らねぇよ」
『いきていけないから、たかきのところに きたの』
「俺は、伊野尾くんの 便利屋さんみたいなもんだもんね」
『たすけて、たかき』
「いのお、くん?」
『たすけて、たすけて』
「、」
『たすけて、たすけて、たすけて』
「…それが、伊野尾くんの本音だね?」
『たかきしか たよれるひといないの。たすけて』
「うん、分かった。分かったよ」
高木の せつなげな声と ともに
ぎゅう
やさしくて あたたかな ぬくもり。
『たかき…』
「いじわる言って ごめんね」
高木は 大きな手で 2、3度 俺の頭を撫でると、
「俺も、伊野尾くんの心臓に なりたいな…」
ため息混じりに つぶやき、
俺に くちつけた。
fin
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作者名:本田 | 作成日時:2017年10月9日 1時