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夜の外出は極力控えねばならない。そういう規則だ。しかし俺は守らない。というか大人が規則を破るのに子供を縛り付ける意味が分からない。
いつも屋根の上に寝そべりダラダラと消灯時間を待つ。目を精一杯見開いて夜空に散らばる星を頭のフィルムに焼き写しをするのだ。
「やっぱり胸が苦しい……悲しいとかじゃないってのに」
あの日から生まれた胸の苦しさが未だに取れずにいる。
ロイが本の所持をしていた。あいつが連行されたと全体に知らされたのは一日後のことで、夢では無いことを自覚させられた。それに加えて兵士の言ったことは遊びだった様で俺が関与した疑いの可能性を全く提示していない。それどころか現場に一人でいた事になっていた。
久しくあいつの名前を呼んでやれなかったとか、あいつの考えを聞いてやれなかったで初めのうちは後悔をした。しかし今はどうだろう。何事も無かったかのように日常を過ごすただの少年ではないか。
ロイが連行されてからみな悲しんだ。頭が良く優等生、考え出すと止まらなくなる哲学的思考の持ち主で変わったやつだが将来を期待されていた分ショックが大きかった。
皆のロイ・ジェイキンス。
孤独のグレイ・レイブリック。
それが俺らの呼び名だった。
「また一人かよ。あーあ、つまんねえ」
「そっか、グレイにとって僕はただの暇潰しだったんだね」
突然の声。普段でも名をロイ以外には呼ばれる事が無いのに屋根の上で声を掛けるやつは初めてだ。故にビックリして落ちそうになった。
恐る恐る首を後ろに向かせるとそこには傷だらけの、いつも着ている白いカッターシャツに赤い花を散らしたあいつが──ロイが立っていた。
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