過去を否定 ページ26
『夜は何も出来ねぇ。バレーも……誰かと話す事も。……毎日毎日、アイツらの恨み言やら嫌味やらを聞いて……』
アイツら……親だろうか。
『寝ちまえばそれこそ悪夢。俺の話聞いてくれる奴なんか1人も居なくて……ただ俺だけが嫌われて、疎まれる。それがクソみてぇに嫌で……嫌で……』
「"怖い"？」
『……うん』
まともな環境ではなかったと聞いた。だから人一倍打たれ強いんだと。
でもそれは体だけの話であって、心はそうもいかないはずだ。
「……ずっと怖かったんだろ」
人一倍傷つきやすく、そしてそれを隠そうとする意思も強い。でも本当は傷の治し方も分からない。何度も同じ事を繰り返し、積み重ね、気付いた時にはもう傷は酷く膿んでいるんだ。手遅れな程に。
『……そうか。……怖かったんだな……俺』
傷つけるのも、傷つけられるのも、傷を見るのも怖い。
『ガキん頃から何でもかんでも押し付けられてさ……出来ねぇと馬鹿でけぇ声で怒鳴られんだ。なんで出来ないんだ、そんな頭の悪い奴にお前を育てた覚えは無いって。……そういう時、決まって俺は動けなかった。…………今分かったわ、あれは……怖かったんだろうな』
「！……確かに、子供は誰だって怒鳴られるのは」
『いや。それはただうるせぇなって思ってた』
「じゃあ何が……？」
叶多は長い指で自分の右目に触れた。
『……目』
「目？」
『……アイツらの目が怖かった。目の前に居るはずの俺が映ってないんだ。……アイツらが見てたのは俺じゃなくて、出来損ないの息子っつー汚点が無い完璧な自分自身だった。……あー、そういう事かよ……』
……叶多を見ていたのは本当にごく一部の人間だったんだ。おばあさんや、バレー部の人間。実の親なのに……なんで叶多を見てやれなかったんだろう。だって
「お前は出来損ないなんかじゃない」
『……』
「確かに周りに目を向けられない馬鹿だし、すぐ手が出る喧嘩っ早い奴だよ。……でも、お前は優しい」
ずっと、強い人間だと思っていた。物理的にも精神的にも。
「谷地さん守っただろ。お前とつるむ俺達が何か言われたら言い返してただろ。……十分優しいよ。出来損ないなんか間違いだ、真に受けるな」
大粒の涙をボロボロ零すそいつの頭をぐしゃぐしゃに掻き混ぜた。
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すみた先生(プロフ) - ぁさん» ありがとうございます！次から続編に移行しますので、そこでも頑張ります！更新遅いですが、出来れば読んで行ってください！ (2022年1月28日 17時) (
レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
ぁ - 更新頑張ってください！ (2022年1月28日 0時) (レス) id: 4b3179590f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 千椛さん» ありがとうございます！なるべく早く更新します！！待たせてしまい申し訳ありません！ (2021年10月21日 21時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
千椛(プロフ) - 更新待ってます！ (2021年10月21日 6時) (レス) @page31 id: 23dec5609f (このIDを非表示/違反報告)
すみた先生(プロフ) - 青丹色さん» ありがとうございますっ！クオリティ落ちないように頑張ります！ (2021年8月18日 8時) (レス) id: 547ebe12b8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年8月6日 23時
