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誰かの命を背負うなんて御免だ。あの日から私の人生は償いでしかないんだから、そこに更に重荷を乗せたくなかった。
ベッドに沈む体。心も沈んでいくようで、それを引き留めようとは思わなかった。
『……大丈夫。強いじゃん』
私は強い。きっと誰よりも。道中どうであれ、最後に嗤うのは私だ。私は負けない。無駄に聡い頭で勝ち進んでいく。負けたら終わりだ、全部。償えない。
償う為に、QUEENは必要だった。
分かっている。今更相棒を疑ってる暇なんか無いんだと。もっとするべき事があって、それをこなしても暇はやってこない。いつもいつも、常に不信感を抱えながら信じようと思う。矛盾もいいところだ。信じられないくせに、信じたいなんて。
信頼……なんて、そんなの道具でしかない。相手に付け入る為に、油断を生み出す為に、磨き上げるスキル。確固たる信頼なんて無い。そんなもの、本の中にしか存在しない。人は誰だって裏切る。いつ如何なる時でも。だから警戒してないと安心できない。
裏切りが怖いんじゃない。その後の、自分の命に差し掛かるのが嫌なんだ。私の償いの邪魔をして欲しくないから。
『……疲れた』
あぁそうさ。疲れたんだ。昔の自分を殺すのは本当に疲れる。どんなに強大な敵より、どんなに遠くに足を運ぶより、何より。
"朱雀叶多"は私に必要なくて、この世には居ない。はずなのに、私は殺し続けている。どうして、と問い掛ける声を無視してナイフや銃を手に取る。幼く、非力な少女へ無慈悲な暴力を翳す。
父さん……私、何の為にPhoenixを創ったんだっけ……父さんと母さんとの約束って、何だっけ……
〈叶多、これは父さん達との大事な約束だぞ〉
〈何があっても、これだけは忘れないこと〉
そうか……彼女を殺してしまうと、思い出せないんだ。
『は、は…………たぁのしぃ、な』
怖いなぁ。私ってここに居るっけ。
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作者名:すみた先生 | 作成日時:2021年4月10日 18時