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音も無く待っていたJACKは、俺の姿を確認して足を動かした。俺もその後を着いて行く。
『"邪魔ならJACKでさえ殺す"……ね』
「！……あれは、アイツらを撹乱させる為の嘘だ」
『別にどっちだっていい』
珍しく言葉に感情を乗せたJACK。……いや、これは叶多だろうか。
「……悪かった。誤解させちまって」
『……』
俺の言葉に叶多は足を止めた。そして帽子のつばで顔を隠したまま振り返り、俺の前まで歩みを進めた。言いようのない威圧感に無意識に顔に力が入る。眼下で叶多が拳を握ったのが分かった。
……殴られるか。そりゃそうだよな、裏切り紛いの事をしたんだから。
罰を、その拳を甘んじて受けようと、その場からは動かなかった。
『……っ、大丈夫』
飛んできたのは拳ではなく言葉。叶多は特に何もせず踵を返し、歩き始めた。
『お前を殺さない。……私らには、生きる事しか許されてないんだから』
「！、か……」
『全部終わったらその後で……
私を殺してくれ』
耐えるような声だった。握った拳をそのままに、叶多は俺の先を歩き、やがて姿は見えなくなった。俺は足を踏み出せずにいた。
「……殴れよ」
いっそ殺された方がマシだ、と恨み言を零した。
「……泣くな」
涙目で蹲る小さな俺に言った。
「もう泣かねぇって決めただろうが。……守れよ。傷付けんなよ。見ててやれよ。……手ぇ貸してやれよ」
下を見ると、地面は水玉模様だった。
「このっ……クソったれの、弱虫が……っ」
泣く俺はもう居ねぇ。俺はただ……誰よりも強くなりたかった。
そしたら、叶多を……
「守、る……っ、叶多……ぁ」
ごめん、ごめんボス。今の俺……あんたとの約束が分かんなくなっちまった。
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
