110発目 ページ27
その声を合図に、私は1人分空いた穴をすり抜けた。
「右」
『りょーかい』
入り組んだ迷路のような闇市を駆ける。
後ろから追ってくる音も聞こえる。
「どこだ！」
「こっちに逃げたぞ！」
「こっちだ」
落ち着いたQUEENの声を頼りに右、左、と進んで行く。
入ってきた所とは全く違う所から、どこかの路地裏に出た。
「もう大丈……」
『いや』
私はその場から飛び退いた。
瞬間、ナイフを突き出した男が上から飛び降りてきた。
『なるほど、敵をいち早く捜し出して殺す、それがお前のやり方か』
「……」
金の短髪に剃り込みが入った男は、何も言わずこちらを睨みながらナイフを構えた。
ハウンド。元は一匹狼の殺し屋。いつからか明確ではないが、割と最近Leafに加入した。故に連携の取れた動きは無理。
と、目星を付けていた。
「っ！」
『っと』
真正面からの突進。鋭い突きを両手で止める。
『QUEEN、手出しは要らない』
「あっそ」
『ハウンド……、良いスピード、とパワーだ……っ』
まぁ、生憎私はパワー押しにはあまり強い方ではない。
『ただ……、色々…お粗末だ……よっ！』
「！」
上半身をそのままに、脚を振り上げ無防備な脇腹に膝を入れる。
力が抜けた瞬間に背負い投げ、ナイフを取り上げて喉元に突き付けた。
「……！」
『確かに強いと思うよ。……ただね、もっと使い方を学んだ方がいい』
動けないよう手足を捻り、首筋に手刀を入れて気絶させた。
「良いのか殺さなくて」
『殺したら後々面倒臭いことになる。こいつは幹部クラスだから、殺したらKINGが黙っちゃいない』
「……でも、なんでここが分かった」
「答えはシンプルだよ」
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作者名：すみた先生 | 作成日時：2021年4月10日 18時
