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No.108 ページ8
それに、目黒くんは驚いたようだったけれど、
私に微笑んでくれた。
――でも、
悲しそうな表情は変わらなくて……。
「……だから、
姉さんは不安だった。
自分が捨てられるんじゃないか――って、
何度となく、心配で堪らなかったんだ。
だけど、……あの男はプロポーズした。
俺は現実から目を逸らして姉さんを祝福した。
それで姉さんは
もう、大丈夫なんだ――
そう、思ったんだって。
あの男は周到だったから、
同棲して携帯を容易に見られるような状況で、
浮気のメールや電話の履歴を全部完璧に消していて、
……姉さんが一度
怪しんで携帯を見ても証拠なんてどこにもなかった。
――でも、不安は消えない。
違和感が募れば募るほど、
姉さんは不安を増幅させていった。
……おそらく、
姉さんの精神状態は俺が現実を見てしまった直前に
限界を迎えたんだと思う。
そのとき、
姉さんはあの男にみっともなくもすがった――
信じてるから浮気なんてしないよね……
してないよね――
そんな、惨めたらしい言葉ですがりついたんだ」
その光景が目に浮かぶように目黒くんは息をつまらせる。
「……それが、愛が重い理由なの？」
私は酷くかすれた声で尋ねていた。
目黒くんはそれに頷く。
「詳しい話は全く分からないままなんだけどね――」
そう言って寂しそうに笑った目黒くんに、
どういうことだろうかと私は訝しむ。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
