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No.139 ページ39
「あはは冗談冗談。
さすがに彼氏持ちに手は出さへんってー」
「……本気かと、思った」
聞こえないくらいの声で、呟く。
キスするのが、じゃなくて。
……もしかしたら、康二くんはまだ、私のこと……。
気のせいだったらいいと思いつつも、
どこかで確信を持っていた。
「……まあ、
もう知りたいことは言ったつもりなんやけどね」
ひとしきり笑った康二くんはそう言った。
「さっき言ったやろ？
康二は『仮にも』、
俺が好きやったんやって」
「……仮、」
それは、
川波さんが康二くんのことを本気で思ってなかったってこと？
「分かった？
まあ察しの通り、
川波が好きなんは俺なんかやないねん。
川波はさ、
……なんていうか、
本当は俺じゃなくて、
……俺に誰かを重ねてるようだった――」
「……もちろん好意はあったと思うで？
そうじゃなきゃそんなこと手伝わへんやろうし。
やけど、……うまく言えへんけど想いの強さって言うんかな、
Aちゃんが目黒を想うような、
……目黒がAちゃんを想うような、
……そんな感情を、
川波は俺には抱いてへんかったから。
……むしろ、それを抱いてた相手は――」
そこまで言って、康二くんは苦笑した。
「まあ利用したやつが
何を言ってるんだって感じやんな」
「そんなこと……」
「俺のこと、嫌になった？」
康二くんはずっと浮かべていた笑みを崩して真剣な表情で私を見つめた。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
