No.136 ページ36
「……そっかー。
その様子から察するに、
……本当に何も知らない――
知らされてないんだね」
探るような川波さんの言い方と目付きを浴びて私は黙り込む。
「予想外だよ。
目黒くんがまさか言ってないとはね。
意外――でもまあ分からなくもないかな。
……知らせない方が、、、
知らない方が、
幸せであることはあるから」
川波さんは目を伏せる。
「……そうして隠す理由も
わかってるつもりだけど――」
「川波さん……何言ってるの？
全然分からない――」
川波さんはふっ、と唇の端を歪めた。
「……どうして
目黒くんが私と付き合ったのか、
不思議には思わなかったの？」
「……か、川波さんのことを
目黒くんが好きになったのなら――」
言い終わらないうちに
川波さんは苛立ちを露にして、私を射抜いた。
「全部故意なんだよ？
二人は、踊らされて。
すれ違うように仕向けられて。
……付き合えたはずの関係を、引き離され続けた。
目黒くんは……甘いよ。
私は……自分が最低なやつだと思う。
二人は、――私を責めるべきなんだ」
何も言えない私に、川波さんは自嘲した。
「……木ノ下さんが本当に知りたいなら、
聞くべきだと思うよ。
そのときに、私を責めても構わない」
……川波さんは、泣いてしまいそうだった。
……目黒くんが私に隠していることは、
そんなにも私を深く傷つけることなんだろうか。
そして、……川波さんをも。
……でも、でも私は。
呼び出した彼は、どういう意図なのか分からず
戸惑っているようだった。
「……どうしたん、Aちゃん」
「教えてほしいことがあるの。
――康二くん」
でも私は、――目黒くんのあの表情の理由を知りたい。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
