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No.101 ページ1
「俺と姉さんはずいぶん年が離れてて、
……今は社会人になってる。
当時は俺が中二で姉さんが大学二年だった。
わりと家から近くの大学に入学したから、
家から通ってたんだ。
……中二だった俺は、まあ思春期だったわけだし、
周りがざわついてたのをうんざりしてた。
いや、純粋にはどうでもよかったんだけど。
いろいろ面倒だったから、ね。
……だから、なのかもしれない。
ある日、姉さんが家に彼氏って言って、
男を連れてきたんだ。
母さんは安心したんだろうね――
ずっと姉さんに彼氏ができていないことを心配してたから。
……ともかく、
その男は家族に頭を下げて言ったんだ。
彼女と結婚を前提に付き合ってます――って
感じのことを」
そこで楠木くんは
深いため息をついた。
「……それはいいことなんじゃないの？
お姉さんにとっても、目黒くんにとっても」
私は問いかける。
「……そうだね。
いいことだよ。
本来喜ぶべき言葉で、
不安に思う必要なんて何一つない言葉だ。
……でも、
その言葉に気持ちが入っていなければ
それはつらつらと嘘を述べているに等しい」
何かを睨み付けるように目黒くんは前を見た。
そして悲しそうに笑う。
自嘲的な笑みだった。
「……分かっちゃったんだよ、木ノ下さん。
俺には、
その――姉さんの彼氏と呼ぶべき男が、
姉さんを結婚を前提にだなんて言えるほど、
……愛してなんていないことを」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
