No.132 ページ32
とりあえず人目につきにくい店に入った。
それでも視線が痛いことに変わりはなく、
私達(渡辺くん以外の)は肩身の狭い思いをしながら
座った。
私は席につくのもそこそこに重い口を開く。
「渡辺くん……
デートで着ぐるみはないよ……」
朝はまともな服装だったのに、と私は苦笑いをする。
湊ちゃんの横に座っている渡辺くんは、
なんとも不気味というか他になかったのかと思えるような奇妙なキャラクターの着ぐるみを来ていた。
「だよねっ!?」
湊ちゃんは半泣き状態だ。
「えー、俺的にはぴったりだと思ったんだけど」
そう言って笑った。
笑っても着ぐるみを着ている。
「……やっぱ俺、出ていい？
こんな不気味なやつと一緒にいたくないというか」
目黒くんは明らかに嫌そうに席を立とうとする。
「いや……うーん……」
確かに仲間とは思われたくないけど。
「衝動的にビビッときたんだよね！
これは……買うしかない……って思ったんだよ！」
「着ぐるみにビビッとくるって……
どんだけマニアックなの」
湊ちゃんは冷静に突っ込んで、はーとため息をついた。
「……翔太のセンスに脱帽するよ」
「脱力の間違いでしょ」
「ま、まあまあ……」
嫌な空気に、私は内心冷や汗をかく。
そんな心意を知ってか知らずか、渡辺くんは手を広げた。
「俺の味方するのは、木ノ下さんだけだよっ！
心のオアシス――…」
そう言って、渡辺くんが私に抱き付こうとすると、
べりっと音が出そうなほど強引に目黒くんが引き離した。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
