No.125 ページ25
木ノ下さんは俺に告白してから、俺を避けているようだった。
まあ気まずいのは分からなくもない。
俺も、なんだかどう話せばいいのか、
今までどんな風に話していたのか、
……なんだか分からなくなった。
当然それはぎこちなさに繋がる。
……きっと避けてると思われてるんだろうな、と
俺は内心で苦笑した。
――こんなこと、今までなかったんだけど。
……川波さんに言われてからどうもおかしい。
――もしかしたら。
なんて、思う。
……木ノ下さんをちらりと見て、また正面に向き直る。
――胸が、痛い？
まさか、と思っていると空いていた隣にどすんと誰かが座った。
視線を向けると、やっぱり渡辺だった。
「……なに、渡辺」
無愛想に尋ねると、
渡辺はにやにやと笑みをこぼしている。
「気持ち悪いんだけど」
はあ、とため息をつけばようやく笑みを崩した。
「なに、目黒。
物欲しげに木ノ下さんのこと見ちゃって」
思わず舌打ちをした。
「うわっ、態度悪いな」
「……物欲しげになんてしてない」
そう返すと、渡辺はまた笑みを浮かべた。
「見てたことは認めるわけだ？」
はあとこれ見よがしに俺はもう一度ため息をついた。
「……振ったんだよ、木ノ下さんのこと」
渡辺はそれに目を丸くした。
「マジで!?
……振ったの？」
「お前が言ったんだろ。
望みがないなら振れって」
「……そりゃ言ったけど」
妙に煮えきらない態度に、何なんだと思う。
「……お前、
お姉さんのこと、木ノ下さんに言ったのか？」
「……言うわけないだろ」
そんなこと言って、
どうなるっていうんだ、と俺は続ける。
「……言った方が、楽になるんじゃないかと思って」
渡辺は俺の様子を窺いつつ、言う。
「楽？
……誰が」
俺は答えがわかっていながら、
わざわざ言わせようとした。
渡辺もそれを察したらしく、露骨に嫌そうな顔をした。
「……お前が、だよ」
予想通り、と思いつつも即座に返答する。
「言っただろ。
姉さんのことは――」
渡辺はそれを手で制した。
「関係ない――分かってるよ。
でも、それなら、
――本当に気にしていないのなら、
……振ったときにそう言えたんじゃないのか」
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月15日 18時
