それでも好きになった。③ (ページ17)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:39,899 hit

No.117 ページ17

顔を隠していた手をやんわりとどかして、

ぼろぼろと泣きじゃくる川波さんに、

ハンカチを差し伸べる。

その状況が、

木ノ下さんのときと似ていて俺は少し可笑しくなる。

「……いらない」

川波さんは自嘲ぎみに笑って、ハンカチを押し返し、

自分のポケットからハンカチを取り出した。

それに俺は苦笑して腕を引っ込める。

「……目黒くんは鈍いよね」

目を赤く染めた川波さんはおもむろに口を開いた。

「え？

我ながら鋭い方だと思うけど」

いきなりなんだ、と俺は驚く。

「……木ノ下さんは

もう、向井と付き合っちゃうかもよ？」

……それが

どういう意味か掴めなくて、俺は戸惑う。

「さっき木ノ下さんたちが私達の後を追ってたでしょ？

そのとき私は目黒くんに近寄って、

木ノ下さんから見たら私達がキスしてるように見せた。

……完全に望みがないって思い知らせるために」

「……望み、ね」

「予想外だったよ。

目黒くんはいつも恋愛なんて興味ないって態度を
貫いてたから、

……まさか木ノ下さんのこと好きになるとはね」

「…………は？」

「――やっぱり気付いてないんだ。

他人に対しては鋭いけど自分に対しては鈍いの？

……それとも、

そういうことに頑なな理由が何かあるせいなのかな」

探るように目を覗き込まれる。