それでも好きになった。② (ページ47)

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No.97 ページ47

渡辺くんは困ったように笑った。

「……目黒だよ」

私はそれに目を見開く。

「……ごめんA。

嫌がるの、分かってたけど……

目黒くんも真剣に言ってたから。

私にまで頼むくらいだもん。

……何か、伝えたいことがあるんだと思う」

湊ちゃんは辛そうな表情をしていた。

戸惑う私に、渡辺くんは言った。

「――木ノ下さん。

帰っても、いいよ。

ここで帰るならとめないから……。

あいつにも無理だったって言っておく。

……でも、もし少しでも聞く気があるなら……

あいつのために聞いてほしい。

あいつが、ずっととらわれ続けてる過去を、

……聞いてやってほしい」

真摯に訴える渡辺くんに心が揺れる。

――でも、怖い。

忘れられると思っていた恋を会えばきっと思い出してしまうから。

やっと薄れようとしているのに。

……迷惑にならないために忘れようと決めたのに。

優柔不断な私には決断を下すことができない――。

「A。

一度目黒くんに会ってみれば？」

私は湊ちゃんを見る。

「……今までの苦労が無駄になるかもしれないのは分かるけど

――それでも、会えば良い意味でも

……悪い意味だったとしても、

何かが変わるかもしれない」

きゅっと私は手を握った。

「今、目黒くんは……？」

「……いいの、木ノ下さん？」

私は黙って頷いた。

「……あいつは、、

観覧車の前で待ってる」

ありがとう、と返すと

「それはこっちのセリフだよ」と

渡辺くんは笑った。