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No.72 ページ22
……松村という木ノ下さんが好きだった人。
そして、いじめた相手だ。
木ノ下さんはその男に再会したのだと言った。
木ノ下さんの悲しそうに笑う笑顔に辛くなる。
恋はもうしないと自分に言い聞かせてるように俺に告げる木ノ下さんに、
俺は言った。
……木ノ下さんにとっては認めたくないことを。
……恋をしたいと思ったことを、
木ノ下さんに言った。
でも俺は――恋なんて本当に気の迷いだと思う。
だから俺のことを好きになってみれば、
なんて軽々しく尋ねた。
それは冗談だったけれど、
そうすれば松村なんて男のことを、
少しは忘れられるんじゃないかと半ば本気で思ったから。
……だけど、俺は思い出す。
――恋は曖昧なものなんだよ。
気付いたら、好きになってるような。
そう、幸せそうに語った彼女。
それを思い出して胸が痛んだ。
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作者名：いちご | 作成日時：2020年2月11日 11時
