THIS CRAZY LOVE

運命って言ったじゃん。 ページ34

「そんなこと…ない…」

力なく彼女がそう呟くから、俺は言葉を失った。

愛した人を、傷つけている。

学生時代と変わらない、変われてない。


『結婚したら束縛はしないようにする』


そう、心に、決めたはずなのに。

でも、そんな心とは裏腹に、言葉は止まってくれない。

トメラレナイ。

「嘘つくなよ…。俺のいない日を利用して、浮気相手と仲良くやってたんだろ、…？」

腕が震える。

全身が、どんどん冷えていく感覚がわかる。

素直に話してくれれば、俺は、おれは…？



許すつもりだったのか…？



「裕太…」

泣きそうな目で俺を見つめる。

その目が俺の理性を嫌なくらい引き剥がしていくから、抑えられなくなる。

怒りたいのに、怒れない。

感情がうまく、伝わらない。

言葉に、ならない、



「運命だね。」



「…え？」


Aが俺を怪訝な目で見つめた。

"運命"

学生時代、惹かれあった僕らのことを君はそう形容した。


言ったのは、君だったんだけどな…

言葉が悲しみと繋がって、やるせなさに身を焦がされたような、そんな、


「…ごめんね。」


気づけば俺は、そんな言葉を口にしていた。

寂しくさせたから、俺があまりに家を空けたから…そんな謝罪ではない。

これは、



これからすることへの、償いだ。



俺は結婚指輪を外す。


机の上、揺れるシルバー。


これで僕たちは、過去になったね。

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