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第一条 ページ2

___最初に思い出したのは夢だった。





覚束無い思考と鈍器で繰り返し殴打されているような頭痛の狭間、瞼の裏に写った光景を。
私は何故か、これが夢ではなく嘗ての記憶なのだと確信していた。




一人の少年。



朽葉色の髪は煤や泥で汚れ、同色の瞳も他への不信や怒り、悲しみで濁っている。

周囲が嫌悪し石を投げる彼を、私は綺麗だと思った。自己愛故に平気で異物へ牙を向く人間より、ずっと。
だから彼に手を伸ばした。けれどその手は疑われ睨まれ、振り払われる。

それでも他に友人もいなかった私は、仲良くなりたくて只管に手を伸ばし続けた。


何度も何度も。一度その世界(ゆめ)から帰っても、再び寝れば私はその続きに立っていた。




そしてその夢を見るのが何度目かも分からなくなった頃。彼は恐る恐る私に手を伸ばして






___とても綺麗な顔で笑んだのだ。





そしてその笑顔を見た瞬間、私は、これが前世で見た夢(・・・・・・)なのだと気づいた。


天人ではなく黒船の来航によって開国した江戸の、さらに暫くあとの時代を生きた。
平和な時代に生を受け、血肉踊る戦争を経験したことすらないしがない一般市民。それが前世の私だ。






それを思い出してからは、前世の記憶が洪水のように溢れ返ってきた。それはもう、ただでさえ痛い頭が割れるのではと本気で危惧する程の勢いで。



少年漫画が好きだった。特にジャンプが好き。銀魂では高杉を推していた。友人の誕生日によくサプライズを仕掛ける悪戯好き。クラスの中心ではないが仲のいい友人が数名。
大学卒業後、無事就職。初給料で母親に買ったプレゼントは____。







粗方の記憶を汚泥から引き上げたところで、意識が唐突に切れた。そしてゆるりと浮上する。

目を開けてまず視界に入ったのは、雲を思わせるような銀色だった。




「A、目ェ覚めたか」



「………銀にい…」





口をついて言葉が出てから、漸く脳が理解を示す。


____ああそうだ、今の私は「坂田銀時」の妹分なんだった。


数拍の間。





「………ああああああああああ!?!!?」


「うぉっ、何だようるっせーな!」




突然に奇声をあげた私に銀兄が怒鳴る。勢いよく体を起こした衝撃で頭が一層強く痛み、顔を顰めると銀兄は私を優しく布団に戻した。



「まだ寝とけ、お前3日も熱で寝込んでたんだぞ」





頬を精一杯抓ってみた。痛かった。





「え、夢じゃない」


「は?何が?」

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作者名: | 作成日時:2019年7月31日 20時

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