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Sehun side
あのままソファで寝てしまった彼女に、理性なんてとっくに壊れている僕は触れたくてたまらなかった。
無防備に寝息を立てて僕を誘ってくる。
少しだけ。
少しだけなら、許されるよな。
彼女の手をそっと握り、手の甲に軽く口付ける。
SE「…おやすみ、Aさん。」
クローゼットから新しい布団を下ろして彼女にそっとかける。
…このまま、僕のものになってしまえばいいのに。
＊
いつもの時間に目が覚めたので、リビングに向かい出社の準備をしようとドアを開けた。
リビングにはソファに座ってキョロキョロと周りを見ているAさん。
…たぶん、状況を理解していない。
SE「起きてたんですね。おはようございます。」
彼女は僕の方に振り返り、目を見開いて口をぱくぱくさせている。
恐らく、何かされていないか確認したいんだろう。
SE「心配しなくても何もしてないですよ。」
聞かれる前に僕が言うと、彼女は安心したような、でも申し訳なさそうにした。
「いや、本当にすみません…。ご迷惑をおかけして…。」
彼女は僕に迷惑をかけたと思って謝っているんだろうけど――たぶん、彼女が思っている迷惑と、僕が思っている迷惑は意味が違う。
SE「…本当に、警戒心なさすぎです。僕の気持ちも考えて下さい。」
「えっと…すみません…？」
…ほら、わかってない。
SE「…Aさんはわかってません。」
僕があなたのことをめちゃくちゃにしたいって思ってることも、僕だけのものにしたいって思ってることも。
これは僕のワガママだ。
だけど、僕の気持ちに気付かないあなたのせいでもあるんだ。
「あ！私顔洗ってきます！」
弱みを握られたみたいに、不安定で消えてしまいそうな彼女を逃がすまいと腕を掴む。
「あの、私…！」
SE「いいから黙って。」
何か言われる前に行動に起こしてしまおう。
そういう狡い男なんだ、僕は。
彼女の感触を全部僕に刻みつけておきたくて、ゆっくりと目を瞑り神経を集中させる。
少し、あと少し。
もう彼女の甘い匂いが僕をおかしくさせて止まらない。
寸分の狂いも許されない時間が永遠のように感じられた。
――ピヨヨン、ピヨヨン。
宇宙に向かっていたロケットが墜落したみたいだ。
僕は地獄の底にでも沈んだ気分になった。
…あなたの前では、全てが上手くいかないんだ。
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作者名：nel_ | 作成日時：2019年10月18日 22時
