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12.爛々の紅玉 ページ15

「うらた、さん……」



一人になった個室の中で、私はボソリと呟いた。


それが、彼の名前。


初めてできた、村の外での知り合い。


初めての、村の外の人との触れ合い。


今の状況をよくよく考えてみれば、今までの私の生活からはとても考えられないことが起きている。


ずっとずっと村の人たちとしか関わってこなかったのに。


少しの思い切りで、ここまで生活は変わるものなのか。



(でも、やっぱり……)



私はここに居座ってはいけない。


速急に、帰らなければ。



また徐々に舞い戻ってきた、人外の中にいる緊張と不安に、ふぅ、と息を吐いた。



ーーその瞬間だった。



「ここかぁ!!」



バンッ!という爆音を奏でながら、部屋の扉が勢いよく開いたのは。


突然のことに、私は咄嗟に身を縮ませて固まってしまう。


喉の奥からはひゅうと過呼吸地味た呼吸が漏れた。



「あー!おったぁ!」



ーー突然現れたのは、鮮やかな赤髪の青年。


髪と同じ色のルビィの瞳を爛々と輝かせ、ご機嫌そうな笑顔で私を見つめる、青年。



「……な、っ……!?」



思考回路が追いつかない。


今の状況に理解が進まない。


何が起きたの?


この人は誰?


私はどうすればいいの?


脳内はただただ混乱し、混濁し続ける。



「君、うらさんが言うてたお客さんやんな?」



溌剌とした笑顔で。


今にもぴょんと飛びかかってきそうな勢いで。


まるで背後で尾が揺れているような幻覚さえ見えそうな元気さで。


青年は、私に問いかける。



(お、お客さん……でいいのかな……)



どう答えればいいのだろう。


確かに、お客さんと言えばお客さんなのだが。



「え、っと……」



口篭る私に、青年はこてんと首を傾げる。



(……私の方が訳分かんないよ……!)



脳内で謎の逆ギレをかましていると。


青年の背後から、聞いたことのある声が飛んできた。



「さかたぁ! お前何やってんだ!!」



まさに怒号。


荒くなった口調で再び部屋に入ってきたのは、さっき出ていったばかりのうらたさんだった。

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ちょこ - 更新が止まってます!戻ってきてください!続き楽しみに待ってます!(´;ω;`) (2019年12月11日 1時) (レス) id: 1b1d47c664 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 人外の作品大好きです!これからも更新無理のない程度で頑張ってください! (2019年8月11日 21時) (レス) id: 9386fcb447 (このIDを非表示/違反報告)
関西風しらすぅ@坂田家 - うわ…坂田さん可愛い…志麻さんどこいった…好きやわ…人外もんはいいゾ〜 (2019年7月6日 17時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
風空 - 吸血鬼もの大好きです!また毎日の楽しみが増えました(*´ω`*)更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月27日 22時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月26日 20時

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