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2.少し違う4人組 ページ4

(まぁ、そんなこと言っても仕方ない……か)



切り替えるように2度目のため息を吐き、背筋を伸ばす。


いつでもディーラーに相応しい姿勢で。


それは、ここで働き始めた頃から父に口を酸っぱくして言われている言葉。


もう一度その言葉を胸に刷り込み、困っているお客様が居ないかぐるりと辺りを見回したとき。



「うらさぁん! これ、本当にどうするん!?」



賑やかなカジノの雰囲気を割くような悲痛な声が耳に届いた。


高いとも、低いとも言えない。


でも、はっきりと男の人だと分かる声だった。


声色的に、困っていることは一目瞭然。


声をかけようと、声の聞こえた方に身を翻す。


視線を向けた先に、明らかに困っている様子の4人組を見つけた。


正直、話しかけるのを躊躇ってしまった。


なんというか、「カジノに来る客らしく」なかったのだ。


もちろんドレスコードは守っていて、黒色のベストの上にジャケットを羽織っていたのだけど。


ーー雰囲気が、他のお客様とは少し違う気がした。


とは言っても、ここに来ている以上お客様であることに違いはない。


躊躇していた足を踏み出して、私は4人の元に歩み寄った。



「お客様、何かお困りでしょうか」



マニュアル通りに声をかけると、4人の肩がぴくんと跳ねる。


一斉にこちらを向いた視線に、私は怯えることなく続けた。



「お困りでしたら、なんなりとお申し付けください」


「あぁ、いや……困っているわけでは……いや、困ってんのかこれ……」



少ししどろもどろになりつつも会話に返事を返したのは、4人の中で一番小柄な人だった。


困惑からか少し歪められた顔はそれでも整っていて、緑色のネクタイがそれはもう似合っていた。


(……というか、4人とも顔面偏差値が……)



頭の中でふざけたことを考えている間も、彼らは顔を見合わせて困っている様子だった。


そんな彼らに、私は一つの答えを導き出す。



「……カジノは初めてでしょうか?」


「あ……はい。そうですね」



ようやく会話の糸口が掴めて、私はほっと小さく息を吐く。


初めてなんだと分かれば、あとは簡単だ。



「よろしければ、簡単にご説明致しますよ」



いつもの微笑みを浮かべて、私はそう提案した。

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ゆうり - 初コメ失礼します!サンタクロースから読んでます!とても面白いです!応援してます!頑張ってください! (2019年7月1日 17時) (レス) id: 616da87ebb (このIDを非表示/違反報告)
甘夏れもん(プロフ) - 風空さん» 風空さん、ありがとうございます! こちらの作品も頑張るので、どうかよろしくお願いします! (2019年5月6日 9時) (レス) id: ba879bf840 (このIDを非表示/違反報告)
風空 - わ、新作……!私、甘夏れもんさんの前作の作品から見てて……新作って聞いて飛んできちゃいました!更新楽しみに待ってます!自分のペースで頑張ってください! (2019年5月6日 2時) (レス) id: 7d8b5dcb68 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏れもん | 作成日時:2019年5月5日 19時

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