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Aの屋敷に到着し、煉獄は布団を敷いてそこにそっとAを寝かせる。
「大丈夫か?A」
『はい……先刻よりは楽になりました』
浅い呼吸を繰り返すAの顔は未だ青ざめたままだ。
「水を持ってこよう。
先程胡蝶から何か貰っていたようだが…薬か?」
『はい、台所の右上の棚に余りがあるので…それを持ってきてもらえますか?』
煉獄は頷き、立ち上がって台所に向かった。
その様子を眺め、Aは天井をぼんやりと見つめる。
『(最近は減っていたんですけどねえ……矢張り薬の飲み忘れは身体に響く……)』
2、3度深呼吸し、呼吸を整えていく。
これまでにも何度かこういうことはあったが、その度に煉獄が手厚く看病してくれるため、素直にその厚意を受け取ってきた。
しかし、動けなくなる程体調が悪化したのはこれが初めてである。
そろそろ、煉獄には説明しなければ…と思っていた頃だった。
煉獄は水を入れた湯呑みと錠剤を載せた盆をAの枕元に置き、起き上がるAの背中を支える。
薬と水を飲み、小さく溜息を吐いたAをじっと見つめた。
『………すみません』
「謝ることではない!体調が悪いことに気付かず……否、気付いてはいたが気遣えず済まなかった!」
『気付いていたんですか…
前から、何度かお世話になってますもんねえ』
そう言ってAは小さく笑った。
『……医者にも診てもらったんです。
主な原因は精神的な疲労です……しのぶからは、鬼を狩ることが負担になっている、と』
小さな笑いが、苦笑に変わる。
『鬼も元々は人間であった、と思うと…一思いに切り捨てれば良いというのは分かっています。ですが、頭では分かっていても、上手くいかないものですね。
結局、自分の心を殺して…無理矢理に鬼を狩る。その事が自分に返ってきて。その繰り返しです。
ハハッ……全く、不甲斐ない。柱にまでなって………』
「そんなことはない!!」
突然の大声に、Aは驚いて肩を揺らす。
「君は立派に鬼を狩っている!
その思いは君の優しさの塊だ。大事にするべきだ。
しかし、負担になっているのは問題だな!どうしたものか……」
真剣になってウンウンと唸りながら考え込む煉獄の姿を見て、滅多にない事だ、とAは笑った。
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いおり(プロフ) - とってもドキドキして、続きが気になりまくりです……!!更新楽しみにしてます! (2022年12月12日 19時) (レス) @page30 id: c0ee6ff83c (このIDを非表示/違反報告)
シエルくん。 - めちゃ面白かった!! (2022年11月28日 19時) (レス) @page30 id: 82384aca28 (このIDを非表示/違反報告)
ドングリ - 続きが気になるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ(ΦωΦ) (2021年7月10日 15時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
猫の恩返し(プロフ) - ほう、、、覚悟はいいですか?(黒笑) (2021年5月23日 0時) (レス) id: 3ce4a98013 (このIDを非表示/違反報告)
皐月蒼&夜/夜月(プロフ) - らんかさん» コメントありがとうございます!!本日更新させて頂きましたので、是非お楽しみください〜! (2021年2月9日 11時) (レス) id: 1190da7c8b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夜月 | 作成日時:2021年1月3日 0時