15 ページ15
翌日、Aは実家のある山の下の町を歩いていた。
年越し蕎麦用の汁の出汁の匂い。風呂を沸かす為の薪を燃やす匂い。煙管を吹かした煙の匂い。
それらを感じとる暇もない程に、Aは町では顔が知られていた。
「あら!Aじゃない!久しぶりね!!」
『あ、どうも。お久しぶりです〜』
笑顔で挨拶をすると女性たちから黄色い歓声が上がる。
すると、後ろから肩を叩き声をかけてくる男性。
「久しぶりだなあ!
お前はこの辺じゃ1番の色男だからなあ!お前がいると直ぐ俺はハブられ者だ!」
「アンタは元からだよ」
男性に妻から鋭い突っ込みが入り、ドっと笑いが起こる。
「こんな所で時間取らせるんじゃないよ。
久しぶりに帰って来たんだろう?早く家族に顔見せてやんな」
近くにいた高齢の女性が声を掛けると、町の人々は別れを言い、それぞれ引き上げていった。
それぞれに返事をしつつAは山に入り、家を目指した。
ーーーーー
山を登りながら、Aは手のひらに息をかけ、擦り合わせていた。
『いつもと違う格好は少し落ち着かない……』
隊服は包んで荷物に入れてある。
そろそろ家が見えてくる__自然、顔がほころぶ。
『みんな、元気にしてますかねぇ…』
「あ!!!兄ちゃん!」
『おや』
声のする方を向くと、左側の奥に炭治郎、竹雄、茂の姿があった。
竹雄が1番に飛び出し、次に茂、最後に籠を持ち上げて背負った炭治郎が走って来る。
「よっしゃー!俺が1番乗り__うわっ」
近くまで来た竹雄が雪で足をもつれさせ、勢いで身体が宙に浮く。
刹那、Aは踏み込み、落ちてくる竹雄に合わせ、下に滑り込んだ。
『………っと』
そのまま2人で雪に倒れ込む。
「あははは!兄ちゃんすげぇや!」
『まったく……気を付けてね』
起き上がった2人の元に炭治郎と茂が追い付き、抱き着いた。
「兄ちゃん久しぶりー!」
右腕に摑まる茂に久しぶりだねえ、と声をかけ、炭治郎を見る。
『炭治郎も。
俺がいない間もみんなをちゃーんと守ってるみたいだね』
その言葉に炭治郎は笑顔になる。
「うん!まだまだ兄さんみたいにはなれないけど…」
炭治郎にギュッと抱き着かれる。
しばらく話した後、Aは立ち上がった。
『さて、早く家に帰ろうか』
炭治郎が背負って来ていた籠を背負い、荷物を抱える。
「兄さん、それ俺が持つよ!」
慌てた様子で炭治郎が言うが、『ここは兄ちゃんに任せなさい!』とAは笑った。
454人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いおり(プロフ) - とってもドキドキして、続きが気になりまくりです……!!更新楽しみにしてます! (2022年12月12日 19時) (レス) @page30 id: c0ee6ff83c (このIDを非表示/違反報告)
シエルくん。 - めちゃ面白かった!! (2022年11月28日 19時) (レス) @page30 id: 82384aca28 (このIDを非表示/違反報告)
ドングリ - 続きが気になるぅぅぅぅぅぅぅぅぅ(ΦωΦ) (2021年7月10日 15時) (レス) id: 0adc01732d (このIDを非表示/違反報告)
猫の恩返し(プロフ) - ほう、、、覚悟はいいですか?(黒笑) (2021年5月23日 0時) (レス) id: 3ce4a98013 (このIDを非表示/違反報告)
皐月蒼&夜/夜月(プロフ) - らんかさん» コメントありがとうございます!!本日更新させて頂きましたので、是非お楽しみください〜! (2021年2月9日 11時) (レス) id: 1190da7c8b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:夜月 | 作成日時:2021年1月3日 0時