【歌い手】求人募集の先には歌い手【まふまふ】

五本目 ページ7

「歌い手ってご存知ですか？」

『うたいて……、聞いた事ありませんね……』

「普段ボーカロイドの曲とかは聞きます？」

『いえ、私が聞く音楽と言ったら、テレビで流れているようなJ-POPとか、そんなところです』


ボーカロイドはその名前だけ聞いた事があるような感じだ。J-POPは撮影をしていた番組なんかで流れたりするのはいつも聞いていた。

ボーカロイドって確か、機械が歌うみたいなやつだよね。歌い手と何か関係があるのかな。


「うーん、聞いてみた方が早いかなぁ。ねぇちょっと二人共、じゃんけんで負けた人の歌ってみた聞かせよう」

「え、なにそれ恥ずかしっ！」


ゲームする手を止めて、三人がじゃんけんを始めた。私も一度コントローラーを置き、その様子を見る。まず一人勝ちしたのは坂田さん。よっしゃーと言いながら輪から外れる。

相川さんと天月さんは、渋い顔でお互いを見ていた。そしてもう一度じゃんけん。


「よっしゃぁああ」

「えー！僕の聞かせるのー？」


負けたのは天月さんのようで、相川さんは立ち上がって喜びを表現していた。天月さんは渋々という感じで、自身の鞄からスマホを取り出すと、何やら操作していた。

少しすると、天月さんはスマホを私に差し出してきた。私はそれを受け取ると、画面を覗き込んだ。スピーカーからは音楽が流れ出しており、私はそれに耳を澄ませた。


そこからは聞いたことのある曲が流れてきた。小さな恋のうただ。けれど、イントロの後に流れてきた声は、聞いたことのない声。

いつもと違うが、これはこれで聞き心地の良い歌だ。何より歌っている人が楽しそうだし、上手い。歌に合わせて流れるアニメのようなイラストも素敵だ。


『これ凄いですね！』

「それ歌ってるの、僕なんだよ」

『え！！？』


天月さん、相川さんの会社の人じゃ無かったの！！？それにも驚いたが、何より驚いたのは再生回数。数千万回も再生されており、こんな数字は初めて見たのだ。


「これが"歌い手"。主にボーカロイドやJ-POPの曲をカバーさせていただいて、歌ってみたとして動画サイトに投稿してるんです」


だからさっきうらたさんはライブとか言っていたのか。要するに歌手みたいなものなのかな。にしても、これは……ハマってしまいそう……。

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