【歌い手】王国騎士団の見習い

29話 ページ32

(この商人、リュックに人を隠してた！？)


やばい、完全に反応が遅れた。このままじゃ、斬られる！リュックから出てきたやつが、ナイフを振りかぶってくる。

瞬間、後ろからまふまふさんに腕を引かれ、ナイフはなんとか回避。そのまま私は、まふまふさんと一緒に地面に倒れ込んだ。


「くっ……！そらるさん！！」


まふまふさんが苦しそうにそらるさんの名前を呼ぶ。倒れた体を少し起こすと、そらるさんが斧を持ってナイフを持った男と商人の男に向かってそれを振り下ろしているのが見えた。

うっわぁ、強すぎ。一振りで、二人の男は気絶した。多分頭の上で、ひよこがピヨピヨしている状態だろう。


「だ、大丈夫ですか！？」


佳代ちゃんが駆け寄ってきてくれる。あぁ、マイエンジェルよ私は生きているよ。


『うん。まふまふさんが守ってくれたから！』


あの反射神経は流石と言うべきか。まふまふさんが腕を引っ張ってくれなかったら、私は今頃斬られて死んでいただろう。


「あ、Aちゃん……腕……！」

『？』


佳代ちゃんに言われ、腕を見てみる。すると、右腕から少し血が出ていた。避けたと思ってたけど、斬られてたのね、こんなのかすり傷だけど。


『大丈夫大丈夫！こんなのほっとけば治る！』

「大丈夫じゃありませんよ。ちょっと待っててくださいね」


まふまふさんはそう言うと、自分のポケットから白いハンカチを出し、それを私の腕に巻き付けた。


『いっ……』


思わず声が漏れる。ちょっと痛いかも……。

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