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兎角言わずに ページ38

無「ーーーA」



うそ…



「はい…」



とんでもない場所に戻ってきてしまった…



無「ここが何処か、解るか? 」




「ええ、ここは…………



わたしの部屋…です…………」




わたし達が戻ってきたのは紛れもない、



わたしの自室だった………。


ーーー




「うわああああどうしよう!?!?!?!?ごめんなさいごめんなさいすぐ片付けます………………」


恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだ。

無惨さんのお部屋は常に綺麗だったのに対し、自分の部屋の整理整頓の出来なさが目立つ…。




無「気にしはしないからそんなに慌てるな……」


「だって人が来るなんて久しぶりで、あっえーとこっちはこれで…………ぎゃああああああ!!」




ガラガラガッシャーーーン


放置したままの山積みのテキストが、騒音レベルの轟音を立てて雪崩る。



無惨は半ば呆れた様子で不意に軽く瞼を閉じる。


「……あー……ごめんなさい……とてもごめんなさい………」



不本意とは言え来客がいるのに、とんだ歓迎のしようだ。


背中を丸めて散らばったものをかき集めようとした、その時。




ガラララッ



母「ちょっとうるさいでしょ!?!?
ご近所さんにも迷惑なん…………けど…………………」


「………!!!!」



引き戸式のドアを開けて入ってきたのは…わたしの母。



母「……ちょ、っと、その人…………」



やばい。



無「…」


焦りでふと無惨さんの方を横目で見ると、彼はなんといつもと変わらぬ恐れを知らない表情を浮かべている。


「…え、と、その」



この状況をどうにか打破しないと。考え…………





る間も無く、彼はなんと母の方に向かって行く。



「…む、」



母「貴方……何方ですか!?
うちのAに何か………」



「(うちの……A……)」



昔からその言葉を聞く度、気持ち悪さに襲われる。

いつもわたしに当たり散らかすのに人前ではいい様に取り繕っているのも、そんな母の娘という事実も、ただただ気持ち悪い。



わたしは、俯いてしまった。





無「……失礼ですが奥様、




お前にAの母親を名乗る資格は無い 消えろ」




瞬間、



ドグシャァ、と鈍い音が響く。



不意にぎゅっと瞑った目を開くと、目の前の絨毯に血飛沫が散っている。



母が目の前で命を絶たれたというのに、悲しみは微塵も湧いてこなかった。



「…ありがとう、ございます」




不思議な事に、わたしは無惨さんにそんな事を言っていた。

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作者名:スイ | 作成日時:2020年1月25日 22時

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