24：元通りには ページ25
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電話をしながら教室を出て行った美亜を自席で待っていると、戻ってきた彼女はなんだか慌てた様子だった。
「どうしたの？」
「ごめん！先輩からシフト変わるように言われて断れなくて！手紙お願いしていい？」
「いいけど、スマホ見れる？色々確認しながらじゃないと書け──」
「見れたら見る！！」
そう言って美亜は私に封筒を押し付けて、たった二十秒ほどで教室を出た。私があっけらかんとしている間にカサリと机に落ちた封筒は、角が折れ、うっすら折り目が入っている。
手本のような綺麗な字で書かれた彼女の名字も歪にゆがんで、なんだか少し、虚しい。
「……こんなに丁寧な人なのに…」
一人きりの静かな教室に、掌で封筒の皺を伸ばす音が響いた。
残念ながら一度ついた折り目は無かったことに出来ないから、ある程度元に戻ったところで手紙を取り出す。中に入っていたのは今までと違って淡い水色の便箋だ。二つ折りのそれを開くと、目に飛び込んできたのは相も変わらず綺麗な字。以前より量が少ない淡々と紡がれた文章。
文通、面白くないのかな。
文面からなんとなくそう感じ取った。
でもそれじゃいけない。美亜の恋が成就しなくなってしまう。──かといって何を書こうか。今まで彼女の指示通りに手を動かしていた私には皆目見当もつかない。昨日の電話のうちに聞いておけばよかった。
「好きな食べ物、音楽、映画、スポーツ、趣味、家族構成…」
好きな物はもちろん、苦手な物だって聞いた。これだけ知って他に何を尋ねたらいいのだろうか。逆に彼の何を知らない？告白された回数とか？それとも付き合った人数？もはや無礼な質問しか思い浮かばない。
お得意の、風で涼ませて頭の回転を良くする作戦も功をなさず、机の上に項垂れた。もちろん手紙は避けて。
「轟くん…1ーA…ヒーロー科……あ。」
この切り口なら書けるかもしれない。まだ知らないことが沢山ある。
「好きなヒーロー、ヒーローになりたいと思ったきっかけ…あと…」
数分前の状態が嘘のように、まっさらだったメモは彼への質問で埋まっていく。＿今までは自分本位になりすぎていた。彼が話したくなるようなことを聞く方がいい。
そうすれば、彼の紡ぐ文章から少しでも感情が読み取れるかもしれない。強いては、彼のことを理解する糸口になる。
「…よし」
ある程度内容が固まり、今度は便箋にペンを走らせる。久しぶりに浮かんでいた夕日が沈んでいくのも気にせずに。
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つぎはぎウルフ(プロフ) - あかねさん» こちらにもコメントしてくださりありがとうございます。楽しみにしていただけてとても嬉しいです。あかねさんも体にお気をつけて、陰ながら創作活動を応援しております。こちらの小説も更新頑張ります！ (2020年7月16日 17時) (
レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - つぎはぎウルフさんの作品はどれも続きが気になるものばかりで、常に続きを楽しみにしながら読んでいます。これからも更新楽しみにしながら待ってます！体に気をつけて自分のペースで更新頑張ってください！ (2020年7月16日 7時) (レス) id: e8088c70b5 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - きなこもちさん» ありがとうございます。私も楽しみながら書いているものを楽しく呼んでもらえて嬉しいです。コメント読んでいて思わず顔がにやけちゃいました…(笑) 気に入ってもらえて何よりです(o^^o) 更新頑張ります。 (2020年7月14日 18時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
きなこもち(プロフ) - 更新お疲れ様です！いつも楽しく読ませていただいてます。今までそこそこの量のヒロアカ二次創作を読んできましたが、この作品が一番好きかもしれません...！これからの展開がとっても楽しみです(´∀｀)応援しています！！！ (2020年7月13日 20時) (レス) id: 6f695c5604 (このIDを非表示/違反報告)
つぎはぎウルフ(プロフ) - ゆり。さん» ありがとうございます！ヒーロー科×他科の生徒、ということで、接点が少ない分表現が一辺倒になっていないか心配だったのですが、そう言ってもらえて自信がつきました。もうしばらく続きますので、今後も応援よろしくお願いします…！ (2020年7月10日 16時) (レス) id: 845ea04d4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：つぎはぎウルフ
| 作成日時：2020年6月19日 20時
