片恋キャンディ_kwkm ページ3
1年とは早いもので、いつの間にか12月になっているものだ。外出中は暖房のある部屋が恋しくて堪らない。最近はとにかく暖かい場所で食べるみかんの虜になり、オフィスに行く際には手土産のようにみかんを買っている。
みかんと言えば、俺は田中Aという女性を思い出す。彼女は毎日のように口とポケットをみかんの飴玉でいっぱいにしているような人で、そのせいか彼女からは常にみかんの香りがしている。
そんな彼女を目で追うようになったのはいつからだっただろうか。
そんなことを思いながら今日もみかんを片手にオフィスに入る。
川「こんにちは〜。はぁ…あったか」
「あ!川上じゃん。なにそれ?…みかん?」
川「そ。最近好きでさ」
「ふーん…」
興味のありそうな顔をしながらAはみかんの袋を見つめる。
川「なに、食べたいの?」
「いや、そうじゃないけどね」
川「みかん好きでしょ?いつも食べてるじゃん。そのせいでみかん見るとAのこと思い出すんだよね」
「え、本当に?」
川「ここで嘘つかないやろ」
そっか、と言いながらなぜか嬉しそうな顔を浮かべる彼女。しかしなぜかすぐにいつもより真剣な目に変わった。
「…私ね、別にみかんが好きで飴玉舐めてるわけじゃないんだよね」
川「そうなん?じゃあなんで?」
「知りたい?」
川「まあ、多少は」
なにかいつもと違う予感がして心臓が跳ね上がる。
「元彼の煙草の匂いが忘れられないって友達が言ってたの。街中で同じ煙草の匂いがすると元彼のことを思い出しちゃうって。
…私ね好きな人がいるの。だから同じ飴玉を舐ずっとめてればその人に意識してもらえるかなって思ってさ。だからみかんじゃなくても良かったんだよね。実は」
胸が、ちくりと傷んだ。
そうか。彼女には想い人がいて、俺がみかんを見て彼女を想っているときも彼女は別の誰かを想っていたのか。
川「…初めて知ったわ。そんなこと」
「言ってなかったからね。…ねぇ、誰なのか気になる?」
川「別に」
「そっか。なら、聞いて。
私、好きな人の前でしか飴玉なんて舐めなかったの。その人だけに意識してほしかったから。
…誰だかわかった?」
突然の彼女の言葉で思考が停止する。
この言葉の意味がわからないほど子供でも、鈍感でもなかった。
「ねぇ、川上。意識、した?」
修正:11/9
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ゆーな(プロフ) - かなとさん» 確認ミスでした。ご指摘ありがとうございます! (2019年10月9日 7時) (レス) id: 32accdebbf (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい (2019年10月9日 6時) (レス) id: 2c9a625555 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユキ x他1人 | 作成日時:2019年10月9日 6時