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『────しょ、っぴ、くん』


先客……治療室に居たのは、私の幼なじみで。

思わずいつものようにあだ名で呼ぶのも忘れ私は呆然と立ち尽くす。

彼にも、ああ、言われてしまうのだろうか?

【無能】、と。

私が今、1番聞きたくない言葉を。

────条件反射のように私の手は勝手に動き、自らの耳を塞いでいた。


「……A?」


少し不思議そうに首を傾げる彼。

耳を塞いでいるから声は聞こえない、しかし口の動きからして私の名前を呼んだのか。

やめて。

その暖かい声を冷たいナイフに変えないで。

私を見つめた優しい瞳を鋭くさせないで。


私は瞳に涙をうかべ、ショッピくんを睨むようにして見据える。


すると、ショッピくんは軽くため息をついた。

呆れ……のような、言うことを聞かない駄々っ子をなだめる時のような。

そんな表情で。

1歩、また1歩、とショッピくんは私の方へ近づいてくる。

怯えたようにジリ、と後ずさりしてもすぐ背中は壁にぶつかってしまう。

終わりだ、そう思った。

────最後の抵抗と言わんばかりに強く目を瞑ると彼の手が私の腕を掴んだ。

そして、ゆっくりと耳から外される。

ああ、これで、私の聴覚を断つものは何もなくなってしまった。

諦めて彼を見上げると、

満を持して、彼はゆっくりと口を開き……言った。


「────怯えなくていいっすよ。ね」


……その声は、私が思っていた何倍も暖かくて、優しくて、貴かった。

続けて、俺は敵じゃないから、と、そう言って、私を愛おしげに見つめる彼。

……でも彼はそこで初めて、少しだけ顔を曇らせた。

そして意を決したように────彼は言う。


「だから」



「逃げません?俺と一緒に。ここから」

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作品ジャンル:恋愛
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まこち(プロフ) - 初コメ失礼します、続編!!楽しみにしてます!!!! (2022年1月17日 17時) (レス) @page50 id: 2e33e63444 (このIDを非表示/違反報告)
ユノ(プロフ) - シュネーさん» ひえぇありがとうございます……!!!頑張ります…( ´ω` )/ (2021年9月29日 23時) (レス) id: 822e5c31a6 (このIDを非表示/違反報告)
シュネー(プロフ) - ユノさんおめでとうございます!(*•̀ᴗ•́*)و ̑̑がんばれー (2021年9月29日 22時) (レス) @page35 id: ee9d47dabc (このIDを非表示/違反報告)
シュネー(プロフ) - 面白かったです!ありがとうございます!(?)ゆっくりでもいいので、楽しみに待ってます! (2021年9月28日 23時) (レス) @page27 id: ee9d47dabc (このIDを非表示/違反報告)
れたす(プロフ) - 好き……え、設定も文才も言葉選びも何もかもが好き…頑張ってください、応援してます…… (2021年9月28日 7時) (レス) id: 3705531e30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ユノ | 作成日時:2021年9月24日 0時

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