百四十三話 ページ44
ズキズキと痛む感覚が徐々に戻ってきたことから、どれだけの集中力でいたか気が付かされる
「ﾌｰｯ､自分でやれっか？」
『手が、震えて…』
ガタガタと痙攣するせいで傷が上手く縫えずにいた。
「貸せ」と言って傷を縫ってくれる。
目眩で酔いそうだ、壁にもたれて天井を見上げた。
『ﾊｰｯ､ﾊｰｯ、気抜いたら意識飛ぶ…』
痛みと酸欠、疲労や呼吸の乱用。思い当たる節なんてキリがない。
「A、よく聞け」
『なに…？』
コツンとぶつかるおでこ。
朦朧とする頭で必死に実弥の言葉を追う。
「身をもって分かったと思うが、お前を守ってやれる余裕はねェ、すまねェ」
『そんなの…端から求めてないよ』
顎が痛くてぎこちない笑みしか浮かべられない
「ハッ、そう言うと思ったぜェ。…だから頼む。自分の身を守ってくれ。死ぬな」
朦朧とする意識の中に、ハッキリと写った実弥の真剣な瞳。それはゆっくりと近くなって、唇に触れた。
『んっ』
血の味がする接吻は私の頭を次第に覚醒させる。
「愛してる、A」
『やめてよ、遺言みたいで嫌だ』
「死ぬ訳ねェがよ…でも言わせてくれ」
口ではそう言うけど、これまでにない程の緊張感を味わっている。命を懸けた闘いになるのはもうわかっている。
覚悟を決めろ、新堂A。
『愛してるよ、実弥。一緒に生きよう』
もしかしたら、こうやって見つめながら話すのも最後になるかもしれないんだ。
そう思った瞬間に愛おしさが込み上げてしまう。
「いい顔するようになったなァ」
プツン、と縫い糸が切れた。
「行くぞォ」
『実弥…』
ﾌｰｯ､と深い呼吸をした実弥の顔には“痣”が浮かんだ。
それは、彼の寿命があと4年、ということが確定した瞬間でもあった
神様、こんな善良な実弥さえも早くに天国へ連れていくのですか
もう覚悟は決めたんだ、この犠牲に見合う戦いを。
『負けない…！』
そこからどうやって上弦の壱を倒したのか、よく覚えていない。
悲鳴嶼「目が覚めたか」
『な、なにが起きたのですか…？』
朧気な記憶から必死に思い出すのは、ボロボロな仲間の姿だ。
止まらなかった手の痙攣も収まり、残ったのは酷い倦怠感だった。
あたりを見れば、転がる仲間。
『と、時透…くん？』
時透くんに手を合わせる悲鳴嶼さんを見て血の気が引いた。
『ははっ、はっ』
ああ、おかしい。
14才だ。あまりにも早すぎるんだよ。
『ありがとう…ありがとう』
時透くんの頭を震える手で撫でた。
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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです！続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです！ (2020年11月8日 16時) (
レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様！とりあえずお疲れ様でございました！もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます！これからも応援してます！ (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます！性癖っていうんですかｗ続編も見させて頂いてます！これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、！こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します！ (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました（ＴＴ）ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
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