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百三十二話 ページ33

「おら、帰るぞ」

ぽん、と頭に手を置かれる。

その手の安心感が合図かのように涙がボロボロとこぼれ落ちた。

『うぅ…っ、私柱なのにっ…!』

「あー、A。こっち見ろ」

『イヤだ』

「ほら、ガキみてぇに泣くな」

『うう、だって、情けない…!』

「よくやれてた。痛かったろ」

『ダメダメだよ…!』

「落ち着け、大丈夫だから」

後ろ向きな気持ちになると歯止めが効かなくなる私は八つ当たりのように言葉を放った。撫でられていた手も振り払い泣きじゃくるしか出来ない。
なんて不甲斐ないんだろう。

「あ、あの、助けて頂いてありがとうございます!」

突然の声に驚いて顔を上げれば留吉さんのお兄さんが頭を下げていた。

「俺を庇って、血だらけになって…女の子なのに」

『いえ、そんな、…そんなこと言わないで下さい』

「こんなに傷だらけになって…。責任はとります!」

「あァ?」

「Aさんをお嫁に貰います!」

『え?』

勢いよく両手を捕まれ、真っ直ぐ見つめられた。
驚きで涙がピタリと止まる。

「はァァァ?!何言ってんだお前ェ!」

「あの刀さばき、美しい立ち回り、それでいて凛としていて美しかった…」

「馬鹿言うんじゃねェ!Aは俺の嫁になんだよ!その手放しやがれ!」

『ひゃっ』

力づくで私を横抱きにした実弥はお兄さんのことを見下ろした。
傷だらけの巨漢に睨まれたらさぞ怖いだろうに。
お兄さんは身を縮こまらせた。

「ス、…スンマセン…」

「ケッ、帰んぞ。家まで案内しろ」

「ハイ…」

その一連の流れで涙はすっかりひっこんだ。

__
____
_______

留吉「兄貴…?兄貴だ!!!兄貴ー!」

宿まで戻れば留吉さんが走って出迎えた。

「うおおお!留吉ぃー!!」

涙ながらに再会を喜ぶ2人を実弥と見守った。

さっきから私のことを気遣ってずっと横抱きにしてくれている。実弥の白い羽織は私の血がしみて所々汚れてしまっていた。

『実弥、助けてくれてありがとう』

「大したことねぇ。お前も人質さえ取られなきゃ勝てたろ」

『そうだけど…。立ち回りの組み立て方見直さなきゃな…』

「はっ、真面目なこったィ」

『…早死なんてごめんだもん』

実弥の首元に擦り寄って匂いをめいいっぱい吸い込んだ。

「そうかィ」

実弥は優しい声で相槌をうった。

留吉「Aさんとそこの鬼狩りさんも!今日は休んでいってくれよ!」

身体が限界の私はその言葉にありがたく甘えることにした。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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