百三十一話 ページ32
羽奶「これ以上近づいてみなさい、コイツの首を掻き切ることなんて容易いわ!」
お兄さんの首元に爪を立てた。
苦しそうに顔を歪めるお兄さんの首からは赤い血が細く流れた。
羽奶「どーすんの、鬼狩りサン?」
ドクンドクンと早くなる鼓動。
『汚い戦い方…!』
この距離、一歩でも動けば間違いなくお兄さんの首は切られる。
お兄さんを見殺しになんて出来ない。
『わかった。…これで満足?』
日輪刀を床に投げ捨て両手を上げた
羽奶「ふふっ、じゃあそのまま…死ね!!」
身体めがけて飛んできた鋭い羽。
ああ、まずい
あの攻撃をもう一度受けたらひとたまりもない。
かわせるか、あの数はまずい。
致命傷は避けられない。
留吉さんごめん、お兄さん護れないかもしれない。
ぎゅっと目を閉じて痛みに備えた。
「風の呼吸__捌ノ型」
“初烈風斬り”
『えっ…』
私に刺さるはずだった羽は宙を柔らかく舞っている。
「なに情けねェ顔してやがる」
大好きな藤色の瞳がやさしく見下ろした。
『ッ実弥…なん、で』
なんてかっこいいんだろう。
安心する、大きな背中。
大好きな背中。
『どうして…』
「お前の鴉がこれ持ってきてよ」
差し出された紙には「Aさんが危ない」と書かれていた。
…鴉。留吉さんが!
「あとは任せろ。お前は止血しとけ」
言われて気が付いた。
床は私がまき散らした血で真っ赤に染まっている。
『でも…』
「でもじゃねぇ、そこにいろ」
威圧的な顔は、反論を許さなかった。
「俺の女をこんなに傷だらけにしやがってェ」
羽奶「次から次へと!!!」
お兄さんの首に爪を突き立てようとしたその刹那
「風の呼吸____壱の型」
“塵旋風・削ぎ”
羽奶の速さを実弥の速さが上回った。
一瞬で吹き飛んだ羽奶の頸はゴトリと床に転がった。
羽奶「は…?なに、私、死ぬの?」
『…死ぬよ』
羽奶「…許さない!許さない!人間は悪よ!」
綺麗な顔を歪ませて叫ぶ羽奶の口を右手で塞いだ。
『…来世、あなたが幸せになれますように』
羽奶「…なに…よ…」
ポロリと涙を流した羽奶は塵となって消えた。
『…んグッ…』
気を抜いた瞬間、血を吐き出した。
痣の力と呼吸の乱発は体に負担がかかる。
「オイ兄ちゃん。平気かァ」
「っはい、ありがとうございます…!」
お兄さんの縄をほどいて安否確認をする実弥を横目に、必死に吐いた血を隠した。
『ッ、ふぅ…っ』
背を向けて、情けなさで流れる涙を隠した。
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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
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