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百十八話 ページ19

鬼殺隊本部からの帰り道。

『もし、私たちに親がいたらこうやって挨拶してたのかな』

俺の隣で呟いたA。どこか寂しそうだから乱暴に頭を撫でた。

「多分なァ」

『なんか、一気に現実味を帯びた気がする』

乱れた髪を耳にかけ直してこちらを向いた

「…現実味?」

『実感湧かなかったの。実弥のお嫁さんになれるって』

ふふ、と口元を覆って笑を零した。

『お館様に花嫁姿はやく見せたいから、はやく鬼ぶっ飛ばそうね』

ぐっと拳に力を入れてもう一度笑った。

夏も終わり、Aの黒髪を揺らす風は少しばかり冷たい。
腕を引けばいとも簡単に腕の中に収まった。
片腕でAを抱きしめて、頭の上に顎をのせる。

「…そうだなァ」

『うん』

しおらしくなったAは遠慮がちに背中に腕をまわした。

「A」

『ん?』

「一緒に、住むかァ」

お館様にお話もしたことだし、いろいろ手続きもし易いだろう。

なによりAと離れて暮らすのはもうそろそろ限界だった。


『うん!』


思いのほか強い力で抱きしめられて潰れた蛙のような声が出た。か弱い女だと錯覚しがちだがコイツも鬼殺隊の柱だということを思い出させられる。
腕の中で子供のようにAははしゃいで飛び跳ねた。

『すぐ宮里さんに話さなきゃ!またね実弥!』

送っていく気満々だった俺は、するりと腕から抜けるAの温もりが名残惜しく感じた。

「ったく…」

トンっと身軽に飛んだAは家屋の屋根を伝って次第に見えなくなった。

これからはAと毎日同じ布団で寝られる、という事実に柄にもなく気分が高揚している。

ニヤける顔に力を入れて自分も帰路に着いたのだった。

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パチ麻呂(プロフ) - snowさん» コメントありがとうございます。最後の部分は個人的にこだわっていたシーンなので嬉しいです!続編の方も楽しんで頂けたら嬉しいです! (2020年11月8日 16時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
snow - パチ麻呂様!とりあえずお疲れ様でございました!もうすごく感動的というか、画面の前で号泣してしまいました。ありがとうございました。高評価して、続編に飛んでいきます!これからも応援してます! (2020年10月28日 22時) (レス) id: 6289ae6079 (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - お返事ありがとうございます!性癖っていうんですかw続編も見させて頂いてます!これからもよろしくお願いします(*'ω') (2020年6月22日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)
パチ麻呂(プロフ) - みーささん» うわわ(;_;) すっごく嬉しいです、、!こういうオチが性癖なので受け入れていただけるのは本当にありがたいです(( 続編でも当作品よろしくお願い致します! (2020年6月16日 1時) (レス) id: 1f374d88ae (このIDを非表示/違反報告)
みーさ(プロフ) - コメント失礼します。どストライクな作品でもう号泣しました(TT)ありがとうございました!! (2020年6月15日 21時) (レス) id: 02b4f910b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:パチ麻呂 | 作者ホームページ:ないです〜  
作成日時:2020年5月4日 0時

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