四十三躍 最後のオチは大体目に見えてる ページ42
「本当に行かなきゃいけないの?神威」
「…信女は行きたくないんだ?」
何の無難もない質問をしたつもりだったが神威はそれを真正面から答えようとはせず、逆に信女に聞き返したのだ。流石にそう予想していなかった彼女は少し顰めた顔で神威を見つめる。
「質問したのは私なんだけど」
「別にイイじゃん。日本ではよくある日常会話の形でしょ?」
「そういう事じゃなくて…」
と、信女が言い終わらないうちに神威は彼女の手を取り己の唇に押し当てた。
「…なっ」
信女はまたまた予想を反する彼の行動に流石に動揺し始め、指に当たる柔らかい感触に戸惑いが隠せなかった。兎に角握られている手を引き抜こうと力を込めるが、彼の大きな手はそれを許そうとせずもっと強く握られてより指先の甘い感触に刺激された。
神威は抵抗しようとする彼女に悪戯っぽく笑いかけた。
「それとも俺と行くのが嫌なの?」
「ち、違う」
「じゃ、何…?」
相変わらずの体勢のままジッと信女の瞳を捉える。信女は僅かにかかる彼の吐息に若干頭を眩ませた。彼女にとってこれ以上ない程この刺激は強すぎるようで、くすぐったいその刺激に唇を噛み締めて耐える他なかった。
「…そうじゃなくて私、行ってはいけない気がするの」
「…え?」
少し驚いたのか神威は意外そうな表情をし、僅かに取られた手が緩まる。信女は彼の様子を確認しつつ話し続けた。
「何故か分からないけどそんな興味本意で行っちゃダメな気がして…。…貴方は本当にただ興味があるだけ?」
「……、俺だって同じだよ。ホントは信女と同じように行っちゃダメな気がしてた」
短い沈黙の後、神威は自身の気持ちを語り出した。実は彼も信女と同様にモヤモヤと感じていたのだ。
「…貴方も?」
「うん。でも、だからこそ…、行って確かめようと思ったんだ。信女が嫌なら俺一人で行くよ。俺はこのモヤモヤの正体は何なのか知りたいんだ」
神威はもう一度笑いかけると「行ってくるね」とだけ云い、彼女に背を向ける。…が、すんでのところで信女は神威の長ランの腕の裾を摘み、「待って」とはっきりした声で口を開いた。
「…やっぱり私も行く。貴方の真意を聞いて…、私も知りたくなったわ」
そうして神威のスカイブルーの瞳を見つめ返した。見つめ返してくる彼女の目はしっかりとした決意で満ちていて真っ直ぐ彼だけを見ていた。
「…そして、ドーナツ奢って」
「今までの微シリアス滅茶滅茶にするのやめて、信女」
****
四十四躍 認められないサド野郎は只のクソガキ野郎→←四十二躍 会いに行くのに大層な理由なんてない
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白玉(プロフ) - 面白すぎる..さすがプリン!!ww (2017年10月1日 8時) (レス) id: d7b0293ef7 (このIDを非表示/違反報告)
プリンちゃま(別垢)(プロフ) - みかんさん» みかんさん、ありがとうございます!『面白い』と評価して下さってマジで嬉しいです!!これからも応援ヨロシクお願いします★ (2017年4月8日 20時) (レス) id: 5afe51ca08 (このIDを非表示/違反報告)
みかん - とっても面白かったです!沖田と神楽の所が特に面白いです!これからも更新頑張ってください!応援しています! (2017年4月8日 19時) (レス) id: 7cb491045b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:交差点プリン | 作成日時:2017年3月31日 18時