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第二十二話 社員寮への帰路にて ページ23

コッコッコッ____


彼女が闇夜の中を進む度に黒いヒールは音を立てる。

ボーダー本部で今日起きた出来事を振り返り乍ら敦は彼女の後を付いて歩いていた。


『敦さん』


彼女は思い出したように声を上げると申し訳無さそうに『御免なさい』と云う。


『私これから探偵社に戻ります

社長に報告しなければいけませんし社に取りに行
きたい物が或るので』


「付いて行きましょうか」敦はそう訊くが彼女はフルフルと頸を横に振った。


『大丈夫です 社屋迄後少しですし・・・

敦さんは明日は探偵社で通常通りの仕事ですから
今日は早めに帰って休んでください』


ニコリと笑みを浮かべ彼女は云う。


『鏡花さんもきっと心配しているでしょう・・・

早く帰って上げてください』


彼女の有無を云わせない言葉に敦はこくりと頷いた。

『それから』と彼女は懐を漁ると紙袋に入った何かを取り出した。


『此れは昼間云っていた鏡花さんへの入社祝いです

中身は開けてからのお楽しみですよ』


『此れ お願いしますね』淳は其の紙袋を渡すとヒールの音を響かせ乍ら背を向ける。


「あの!石川さん!」


敦の声に淳は立ち止まる。


「今日は色々有難うございました!

珈琲と洋菓子(ケーキ) とても美味しかったで
す!」


頭を下げて云う敦に彼女は微笑み肩迄の銀髪を翻した。

金木犀の匂いが辺りに香る。


『礼なんて要りませんよ』


夕陽色の瞳が敦を優し気に見つめた。


『私は敦さんの先輩ですから』




.




.




.




コッコッコッ


彼女の足取りと共に軽い音が響く。


コッコッ____



彼女は或る気配に気が付き足を止めた。


『貴方とは丁度話したいと思っていた頃合でしたよ・
・・・・』


電柱に取り付けられた電灯がジジジと音を鳴らす。

電柱の影から姿を現す目の前の同僚に淳は深く溜息を付いた。


『矢っ張り私の懐中時計に盗聴器を仕込んでいたの
は貴方でしたか

危うくお気に入りの懐中時計を叩き壊す処でした
よ・・・・・』


少し恨みの篭った目で見れば目の前の男は面白そうに笑みを浮かべた。


『今日の捜査の結果なら社長に報告してからにして
頂けませんか?

其の後ゆっくりお話しますから』


ジジジと点滅する電灯の明かりが砂色の外套を照らす。


『ねぇ 太宰君_____』


琥珀色の彼の瞳と夕陽色の彼女の瞳が交差した。

第二十三話 灰色の箱→←第二十一話 『敵を騙すなら__』



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RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ミリアさん» コメントありがとうございます。ワートリと文ストのクロスオーバーの話なら考えているのですが銀魂の方は大まかなストーリしか知っていないのでご期待に添えるかは分かりません。なかなか占ツクに顔を出す事が出来ませんがこれからも宜しくお願いします。 (2017年9月23日 18時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 凄く気に入った作品で大好きですもし今後他の作品を作る予定があったらワールドトリガーとコラボかトリップか転生した黒バスかアニメKか銀魂の銀時か高杉の姉か妹の作品が読んでみたいです説明が下手ならすみませんこれからも体調にきよつけてがんばてください。 (2017年9月23日 16時) (レス) id: 14f5017be6 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ひかるさん» コメントありがとうございます。なかなか占ツクに浮上する事ができませんが更新頑張りたいと思います。 (2017年6月17日 22時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)
ひかる - ウォォォ!続きが気になります。(>_<)更新頑張って下さい! (2017年6月17日 14時) (レス) id: c10de46325 (このIDを非表示/違反報告)
RAIN@元アラジンlove(プロフ) - ふにゃたさん» コメントありがとうございます。更新頑張りたいと思います。 (2017年4月3日 21時) (レス) id: 5aca2d49f2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雨雫 | 作成日時:2017年2月24日 23時

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