5話 ページ6
「その理由ってのは、お前にとって簡単に割り切れるほど軽いもんじゃなかったんだろ」
大きく浮かぶ月を見ながら白夜叉はそう言った。
「え?」
白夜叉の手が、私の顎をクイっと上に向かせた。
少し骨ばったその手は間違いなく男のもので、今まで剣を握ってきた証でもあるかのようにゴツゴツしていた。
「泣いてんじゃん」
白夜叉は指で私の涙を拭った。
「こんな廃屋みたいな場所じゃあ、だれもお前さんのことなんか見ちゃいねぇよ。
思う存分泣いとけ。
その分、明日から生きろ」
白夜叉は、私のことを慰めるわけでも、抱きしめるわけでもなかった。
ただ、ひたすらに泣く私の隣にいてくれた。
・
涙が枯れるという表現がまるで本当だったかのように、涙はピタリと止まった。
どれくらいの時間が経ったかはわからないが、白夜叉はいつも通りの表情で、私の隣に座っていた。
「なんで生きろって言ったの?」
それが先刻からずっと、気になっていた。
私は戦う理由がなくなってしまったと言ったが、生きてる理由が見出せないだとか、死にたいだとか。
そう言ったことは一言も言っていないはずなのに。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時