13話 ページ14
白夜叉は、それ以来私の前に姿を現さなくなった。
どうやら聞くには彼は攘夷戦争の戦線からも離脱したようだった。
夜、月を見ていても、白夜叉は現れない。
白夜叉と呼ぶなと言われたけれど、戦場での彼しか私は知らないから、今更銀時だなんて呼べないのだ。
けれど、あの日私を抱いた白夜叉は。
余裕のなさそうな、苦しそうな顔をしておきながら、酷く優しく私を抱きしめた。
明方、体力が尽き果てて脱力し、四肢を投げ出して寝転ぶ私を、白夜叉は寝ていると思ったのだろう。
「ごめん、な」
夜と同じ、苦しそうな顔で銀時はそう言った。
それだけ言い残して、去って行った。
「謝らないでよ」
私がそう言ったのも彼が去った数刻後。
お互い、本当に言いたいことを相手面と向かって言えないのだから、本当に意気地なしだ。
けれど、白夜叉がいない夜は寂しくて。
自分がどれだけ彼の温もりに頼っていたのか、やっとわかった。
もう彼が私の隣に座っているなんて、絶対にないのに。
夜になればチラチラと隣を確認してしまう私は重症だ。
白夜叉が私にキスしていたのは、自分の心の隙間を埋めるため。
私だって彼と同じく、人を斬り殺すことの虚無感を彼で埋めていただけなのに。
今になって、彼としたことが全て虚しく思えてきた。
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凛 - 最高です!胸がどきどきして止まらなかったです!泣きそうになりました。 (2023年1月8日 21時) (レス) @page28 id: 2bc0f45ebb (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - kayaさん» そんな風に言ってもらえてとても嬉しいです!至らない点もあったかと思いますが、そう言ったコメントがとても励みになります。ありがとうございます! (2018年8月8日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
kaya(プロフ) - なんだか読み終わった後、目頭があつくて、気づいたら涙が出ていました。文章が綺麗な素敵な作品だったと思います。 (2018年8月8日 0時) (レス) id: 504932b45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年6月10日 21時