28話 ページ29
これ以上ここにいれば。
これ以上総悟に見つめられていれば、抑えたはずの本心が溢れ出てきてしまう。
「...っ!」
総悟の胸板を力一杯押して、彼を突き放す。
「おい!」
総悟の声を無視して、くるりと背を向け、精一杯走った。
完治していない足は勿論痛む。
真選組にいたい、だなんて。
そんなわがまま、そんな身勝手許されるはずがないのに。
一度決めたのに。
やっぱり、私は泣いていた。
走りながら、何度も何度も溢れる涙を拭ったが、拭い切れないほどに大粒のそれが止まることなく頰を伝ってくる。
・
「ねぇ、私、どうしたらいいのかな」
返ってくるはずもない返事をどこか期待して、私は
「私、決めたの。
真選組を辞めることにした。
殲滅では足を引っ張っちゃうし。
私、もう何にも総悟に勝てなくなっちゃった。
力も、剣さばきも、全部。
やっぱり、単純に男女には力の差があって。
だからこそ、危険を伴う仕事の多い真選組は女人禁制。
私、そんな真選組で一番隊副隊長として生きて来たけど。
いる意味、あったのかな。」
急いで花屋に入り、一本だけ買った花をそこに添えた。
「私よりも強い男の人なんて沢山いるのに、わざわざ私が一番隊副隊長でいる意味が。
わざわざ私が真選組にいる価値があったのかな。
だから、辞めるって決心したのに。
土方さんと組合して、ケジメをつけたはずなのに。
なんでかな。
涙が溢れて止まらないよ。」
再び止めどなく流れる涙が、砂利が敷き詰められた地面にポツポツと灰色のシミをつくっていく。
私は墓跡に手を触れ、ツウ、と指でなぞった。
「お姉ちゃんなら、どうする?
私、一人じゃ無理だよ。」
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年5月11日 7時