32話 ページ33
月日の流れは、俺が思っているよりずっと早かった。
幽霊になったAと言葉を交わした、あの幻想のような夏から1年も経ってしまったのだから
「銀ちゃーん!
どこ行くアルか?」
「ジャンプだよ、ジャンプ!」
ぶっきらぼうに言い捨てて、俺は万事屋を後にする。
何年経っても、夏は暑い。
その暑さに参りながらも、俺は迷いなく足を進める。
一年前のあの日、Aに会ったあの場所へと。
「よォ。
元気にしてたか?」
話しかけても、何も返ってこない。
当たり前だ、ここにあいつのお墓があろうか無かろうが、Aは死んでしまったのだから。
死人に口なしというように、死んだ奴は喋らない。
幽霊にでも、ならない限り。
___俺は、覚えている。
一年前確かにここにAがいたことを。
Aは返事はいらないと言ったが、確かにこう口にしていた。
いつもより下手な作り笑顔で。
少し紅葉した頰で、Aは言っていた。
「私は、
銀時の事が、好き。
10年間、ずっと貴方が好きだった。」
彼女が消えて無くなるほんの数分前。
10年の時を経て俺たちは思っていたことを口にする事ができた。
すれ違い続けてきた気持ちが、通じ合った。
10年という月日が長かったのか短かったのか、俺にはよく分からなかった。
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凛 - とても良かったです! (2022年12月20日 19時) (レス) @page36 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - 岩長漆@三色団子と朧大事さん» ありがとうございます!そういったコメントが一番の励みになります!今後も皆さんにお話を届けられるよう頑張ります! (2018年6月11日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
岩長漆@三色団子と朧大事(プロフ) - 突然失礼いたします、岩長と申します!けんそう様の作品読ませて頂き、とても感動しました!次作の方も頑張ってください!応援しております! (2018年6月10日 22時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年2月10日 20時