27話 ページ28
「ねぇ、銀時。
10年ぶりの夏だね。
私、覚えてるの。
自分が死んだ日もこんな晴天だったって。」
俺を抱きしめたまま、Aは言った。
Aが既にこの世にいないとしても、今俺の目の前にいるという事実だけは、無くなって欲しくなくて。
俺はゆっくりとそいつの背中に手を回して、抱き寄せた。
10年前のあの日から何も変わらない容姿、身長。
俺に比べてまだまだ小さいAを抱き寄せねば、消えてしまう気がした。
「私、捻くれてるから、銀時が幸せそうにしてるだけじゃ、足りないの。
生きてたら、私もその幸せに加われたら、って考えるともどかしい。
だけど、こんな汚い感情にも、もどかしい思いにももう振り回されない。
未練がましく幽霊なんかになることはやめにしたの。
幽霊は、知っている人の前に姿を現しちゃいけないんだよ。
さっきも言った通り、この世を隔てる此岸と彼岸の存在が、あやふやになっちゃうから。
だから、掟を破った私は消えるの。
もう幽霊として現れる事はできない。」
俺を抱きしめ、着流しに顔を埋めていたAは、ゆっくりと顔を上げた。
「私のやりたい事は、これだったの。
最後に、もう一度だけ銀時と話したかった。
今更だけど、気づいた事があったから。
それを伝えたかったの。」
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凛 - とても良かったです! (2022年12月20日 19時) (レス) @page36 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
けんそう(プロフ) - 岩長漆@三色団子と朧大事さん» ありがとうございます!そういったコメントが一番の励みになります!今後も皆さんにお話を届けられるよう頑張ります! (2018年6月11日 8時) (レス) id: aaf4aecbc2 (このIDを非表示/違反報告)
岩長漆@三色団子と朧大事(プロフ) - 突然失礼いたします、岩長と申します!けんそう様の作品読ませて頂き、とても感動しました!次作の方も頑張ってください!応援しております! (2018年6月10日 22時) (レス) id: c1dc633bc5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:けんそう | 作成日時:2018年2月10日 20時