ニジュウイチワ ページ21
そう思えば思うほど僕の中の醜い感情はどんどん大きくなっていく。
嫉妬、
妬み、
恨み、
怒り、
悲しみ。
なんかもう色々ごちゃごちゃしすぎて何がどうだか分からない。
庵崎さん。
庵崎さん。
庵崎さん。
これが一般的に言うならば恋なのか。
……僕は違うような気がするけど。
「林の中って、住みづらくはないのか？」
浅野くんの声で現実に引き戻される。
「全然」
「へぇ、そうなのか」
「……虫が嫌いな人は、無理」
「僕は虫は平気だよ」
「意外」
「どういう意味だ」
通学路を浅野くんと並んで歩く庵崎さんは相変わらず無表情だけど、どこか嬉しそうに感じた。
それを見たくはなかったけど、
まぁ庵崎さんが楽しそうなら今はいいかな。
「庵崎さんめっちゃ喋るね」
「そうだね」
「浅野くんもいつの間にか道路側歩いてるし」
「…………ん、」
もはや相槌にもなってない返事を返す。
勘の鋭いカルマくんにバレてしまうかもと思ったけど、あいにくあの二人に夢中で気付かれていない。
「あ、」
「カルマくん？」
あちゃー、という顔。
「気付かれた」
「浅野くんに？」
「うん」
慌てて様子を伺うとこっちの方をチラチラ見ていた。
「バレてるね」
どうしようと悩んでいると浅野くんは庵崎さんを軽々と持ち上げた。
「あさのくん」
「庵崎さん、ちょっとだけ我慢してくれ」
僕と君のために、とか何とか言って颯爽と走り出してしまった。
「くそっ……惜しかったなぁ」
彼女は確かに軽そうだけど、同年代の女の子をあんな軽々持ち上げた上にあり得ないスピードで走り去って行くなんて。
やっぱり彼には叶わない。
カルマくんなら出来そうだけど。
……あーあ、僕にももっと身長があればなぁ。
「気付かれないように注意はしてた筈なのにね〜、流石に浅野くんだと相手が悪かったかな？」
「あはは……」
僕たちは来た道を戻りながら作戦会議を再開した。
「……ここまで来れば大丈夫か」
大分走ってから足を止めた僕は心を落ち着けながら腕の中の庵崎さんを見た。
肝心の彼女はきょとんとしているが、
気付いていたのだろうか？
あの赤と青の目立つ髪。
おそらく赤羽と潮田だろうが、尾行でもしていたのだろうか。
僕に気付かれないとでも？
「あさのくん」
「？」
「下ろして」
「あ、あぁ……」
あいつらには勝てても、彼女には勝てないだろうと確信した。
続く
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作者名：リン | 作成日時：2018年2月15日 7時
