ジュウサンワ【チイサナハナシ】 ページ13
ぐるぐるぐるぐる
ぐるぐる、
回る
回るまわる廻るマワル、輪る
アノひとは、いない
わかってる
なにもない所がすきな理由も
嫌いなりゆうも
ぐるぐるぐるぐるぐるぐる
頭の中でなる
この音も
死んだ
きえて なくなった
わたしのあのひと
寝っ転がろう
全て忘れてしまおう
思い出さないように
夢の中に隠して
見えないように仕舞っておこう
冷たい地面は、床は
私を拒まない
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
僕は走った。
走って走って息が切れて。
それでも走り続けた。
あの写真。
髪の伸びた……いや、伸ばした庵崎さん。
赤から青になったワンピース。
写真の中の青髪の人は多分もういない。
代わりなんていない。
一人で二人なんだ、彼女はきっと。
あの寂しそうな目を見たとき、何故気付けなかったのだろう。
彼女だったのだ。
誰の代わりでもない、夢の中の人だったのだ。
思い出した。
目的地は裏山の沢。
髪を結んだゴムは木の枝に引っかかって片方が切れてしまった。
もう片方も取って捨てる。
彼女は、居た。
「…………」
沢の中に居た。
足首に流れる水の冷たさに怯えるような、顔をして。
ｻﾞｯ
「いつも、ここに居たんだね」
彼女が振り返る。
時が止まったように感じた。
ピチョン、と水の音がした。
僕の思考も止まる。
……泣いていた。
声も出さず、表情も変えずに、
ただ泣いていた。
伏し目がちな瞼を大きく持ち上げて、僕を見つめていた。
僕も、見つめていた。
両目から溢れる涙は頬、顎を伝って足元に落ちる。
ﾋﾟﾁｮﾝ
ﾋﾟﾁｮﾝ
僕は、抱き締めた。
見ていられなかった。
絶望感と焦燥感。
感じたのはそれだけだった。
普段の異常行動も、自己肯定感の欠如から来たものだったのかもしれない。
誰かを愛すること
誰かに愛されること
きっと彼女が今まで感じられなかったことを、僕の介抱で受け取ってくれたらな……。
そっと、肩に感じた微かな重み。
……背中に回る手は無かったけど、体重を預けてくれるだけでも。
今はそれでいい。
.
【チイサナハナシ】完
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作者名：リン | 作成日時：2018年2月15日 7時
