月と嘘 (ページ13)

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十話ページ13

ベルが頷くと、彼女は少し何かを考える素振りをして、店内へ戻っていった。

私とベルがキョトンとしてると、小さなバスケットを抱え戻ってきた。
どうやら中にはパンやチーズが入っているらしい。

「これをよかったら……。まだお店やってなくて、賄いじゃあないんですけど……」

なんて優しい人なんだろう。
素直にそう思わせるくらい彼女は良心に溢れている。

ベルは慌てて断るが、元々押しに弱い彼は彼女の良心にさらに押され断れなくなったみたいだ。

「冒険者さん、これは利害の一致です。私もちょっと損をしますけど、冒険者さんはここで腹ごしらえができる代わりに……」

「か、代わりに……？」

「……今日の夜、私の働くあの酒場で、晩ご飯を召し上がって頂かなければなりません」

……良心の中に少し黒い部分があるようだ。
したたかすぎて逆に尊敬…

「もう……本当にずるいなぁ」

「うふふ、ささっ、もらってください。私の今日のお給金は、高くなること間違いなしなんですから、遠慮するとこはありません！」

強い…
これはベルも断れなくなるよなぁ。

「……それじゃあ、今日の夜に伺わせてもらいますっ」

「はい。お待ちしております」

ベルはバスケット片手にダンジョンに向かい歩き出す。
だが、ふと、立ち止まり後ろを振り返る。
そして口を開き、

「僕……ベル・クラネルって言います。貴方の名前は？」

名を名乗る。
店員さんも微笑みながら

「シル・フローヴァです。ベルさん」

そう名乗る。

～～
ベルがまたもや私を忘れて走っていった後。

「あのぅ、置いてかれてますが……」

「慣れてますから、あ、私はルナ・ライアです。よろしくお願いしますね。シルさん」

「はい、よろしくお願いします。ルナさん」