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「おい、ここで何をすりゃいい」
「やはり顔面オシャすぎる、相変わらずの最強オシャだ」
「あ、つ、月野さん………って、ボクなんかが名前呼んでも迷惑だよね。どうしよ、気持ち悪がらないでえぇ」
『濃いなあ』
そうとしか評価出来ない面子である。ステージをクリアした人が出たという連絡をもらって、そろそろチームが出来始める頃かと待ち構えていたところに最初に現れたチームがこの濃すぎる面子とは。世界って広い。
『お察しの通りチーム戦だから、他のチームが来るまで説明は待っててね』と伝えれば顔を顰めて黙り込んでしまう凛君に苦笑する。一方で、そんな凛君を気に留める事無く私の方へと歩み寄って来た蟻生君は、長い体躯を少し屈めてジッと私を見つめた後「オシャだ……」と空気に溶ける程に小さな声で呟く。
『そういえば、蟻生君の教えてくれたヘアトリートメント凄く良かったよ。サラサラになりすぎて困っちゃうくらい』
「確かに輝きに更に拍車がかかっている……しかし、想像以上。やはり逸材か」
濃い面子なのは変わりないが、蟻生君が潤滑剤となってくれそうだなと話していて思う。話しやすい人柄だ、彼と話している時は女子会でもしている様な気分になれる。した事ないけど。
オシャという単語は独特だが、褒めてくれているのは容易に分かるので悪い気はしない。オシャという言葉を聞いて、そういえば彼が以前紹介してくれたヘアトリートメントを使ってから更に髪がオシャになった事を思い返して話せば、予想通り話題は髪の方へと流れていく。
取り敢えず笑顔で頷いて聞いているが、私は美容に詳しい訳では無いのでよく分かっていない。取り敢えず、熱弁する蟻生君と相槌を打つだけの私を見て、「す、凄い……大胆だなぁ」と目を隠しながら反応をするのだけはやめて欲しいのだが、時光君。
「ふむ、少し髪が乱れているな」
『あらら、気付かなかった。ごめん、何処かな』
「反対側だ。ここの……」
「おい」
シリコン入りよりも保湿剤入りの方が合うだのと。そんな成分も含まれているのかと私にとっては初耳な情報を熱弁していた蟻生君だが、不意に動きを止めたかと思えばどうやら私の髪の乱れを見つけたらしい。
場所が分からない私の代わりに直そうとしてくれた蟻生君の長い手は、しかし私に届く事なく不機嫌そうな凛君によって捕まれ阻止されてしまった。
……あ、絡まってるところ見つけた。
『凛君もヘアケア談義受ける？』
「受けねぇ」
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
