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私はあの時、確かに彼女達に仲間としてでは無く敵として扱われていて。それは彼らにしても相違ない事なのかもしれないと、改めて実感した気がする。

このプロジェクトの目的は、W杯で日本を優勝に導くたった一人の(・・・・・・)英雄を作る事なのだから、結局は自分以外は敵なのだろう。あんなに信頼しあっている様に見えた彼らの間にも、案外簡単に亀裂が入る事に何故だか驚いてしまっている自分がいた。



「イガグリ!!」
「しゃあ!」



本当に久遠君は動かないんだな、と思いながら端に突っ立つ彼に一瞬視線を送ってから、フィールド上で繰り広げられる彼らの白熱した戦いに視線を戻す。一人抜けて圧倒的不利な状態でも自分達に出来る最善の策を尽くしているチームZの奮闘を目に焼きつける。

臥牙丸君の頭シュートがゴールから外れた事に惜しいと思いつつ、思い切り顎を地面に打ち付けた彼に思わず肩を竦めた。ボールもかなり硬かった筈だし、頭へのダメージが相当大きそうだ。



「………凄ぇ! 面白ぇ!」



次だ次だ、と声をかけ士気を上げるチームZ。確かな感触を感じたのか、依然として明るい表情の彼等を嘲笑うかの様に。御影君には彼らの必死な攻撃にまるで危機感を覚えた様子は無く、ただ楽しそうに目を輝かせて「おい凪! 今のやるぞ!」と凪君を振り返る。

そして彼の足から蹴り出された球は、まっすぐと凄まじい勢いで前線の凪君まで飛んでいき、彼の足元に不思議な程自然と収まった。

嗚呼、凄いな。上手だな。としか思わなかった私とは違って、サッカーを熟知している皆だからこそ分かる何かがあったのだろう。驚きと唖然と、そして隙間から垣間見える絶望が彼らの顔を染め上げる。



「簡単じゃん。なんでこんなの外すかなぁ」



心底理解出来ないといった風に、悪いも何も無くひたすら純粋にチームZを突き放した凪君は、確かに御影君がいつか言っていた通りに正に「天才」だった。

同時に、凪誠士郎の四文字を学校でも見かけた事があるのを淡く思い出す。私がヘマをしてかなり点数を落としたテストで一位をとっていたのが彼であったか。先生の名簿の隙間からちらりと覗いただけであったから忘れていたが、そうであったかもしれない。

なんて悔しいくらいに、羨ましいくらいに才能を持っている事だろう。彼を天才と一括りにしてそれで終わりにしたい訳では無いが、でもその眩い才能に照らされて何だかチームZの影がより濃くなった様な錯覚すら見えてしまった。

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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時

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