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「Aのご飯美味しそ」
「こら凪、距離近すぎんだろ！」
「ちょっと待って、眼鏡外す」
『……こんばんは？』
いっぱい働いたからか何時もなら避けて食べる様なガッツリメニューも美味しく頂けている事に感動して、食堂の隅で満足感を覚えながらも無心で咀嚼して食事を堪能していた私に不意に声を掛けてくれたのは凪君と御影君と剣城君で。
他にも空いている席は沢山あるにも関わらず、一緒の卓についてくれる彼らに思わず頬を緩めれば、眩しそうに目を瞑った御影君の隣で、剣城君が静かに自身の眼鏡を外した。
「何してんの斬鉄」
「顔を見なければ普通に話が出来るかと思って」
『それは見えているの？』
「伊達なんだから意味ねぇだろバカ斬鉄」
私の顔を見る度にフリーズしてしまうのを自分でも自覚していたのだろう。彼なりに考えた方法は、しかしながらそもそも意味を成してないのか御影君から小突かれて突っ込まれている。
嗚呼、あれ伊達眼鏡だったんだ。効果は無い筈なのに「フィルターがかかってる気がする」と言って見せた彼に微笑みかければ、彼は一気に目を手で覆い隠した。
「目を瞑って食うか……」
『剣城君が私の隣に座れば解決するんじゃないかな』
「え〜、やだ。Aの隣気持ちいいんだもん」
『じゃあせめて真正面は辞めてあげたら……』
「え、月野Aの顔を真正面から見れるとか無理すぎんだけど」
『そっか』
それで良いのか。机に凭れかかりながら、何故だか「A、あーん」と甘える凪君の口元に彼のご飯をよそって運べば、彼は何の躊躇いも無く口に含んでもきゅもきゅと頬袋を膨らませながら咀嚼する。
気持ちいいっていうのは世話を焼くからだろうか。体躯が大きいにも関わらず、小動物みたいな雰囲気の彼は甘やかしたくなってしまうのだ。御影君の気持ちも今なら分かる。
『御影君もあーんする？』
「っ、ぅ、ごほッ……は、え!?」
ジーッ、と。少し目を細めて、どこか羨ましそうに熱を込めて視線を送る御影君にも首を傾げて問えば、いきなりの事に彼は喉に詰まらせて何度か咳き込む。そして、零れ落ちそうな程に紫玉を見開いて私をマジマジと見た後、「お願いしマス……」と顔を真っ赤にしながらも期待を込めて、手を震わせながら箸を差し出した。可愛い。
「！ 取れた！」
「斬鉄それ違う」
『目は開けた方が良いと思うけどなあ』
賑やかだ。御影君のスプーンを満足そうに掲げた剣城君に笑いながらそう思った。
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
