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『怪我人は君？』
「アッ、はい光栄です!!」
『うん、頑張ったね』
他のチームでも馬狼君の様に主張された存在が続々と現れて来て、試合のルールはやっぱりよく分からないが熱心に観ていた私を、無情にもお兄さんは「Aちゃん仕事」と手当てに駆り出した。仕事なので仕方無いが。
到着した際には、残り僅かだった試合も既に終わっていて分かりやすくフィールドに座り込んでいる怪我人の元へと駆け寄れば、彼は薄らと赤くなった足を押さえながら怪我人とは到底思えない快活な返事をする。元気だなあ。
『……痣かな、少し冷やして様子を見ようね』
「は、はいッ!! あの、」
「あ？何でアマがこーんなとこに………お」
『月野A、ですが……』
何でこんなおかしなところに痣が出来るのかは不思議ではあるが、取り敢えず患部を固定してアイスパッドで冷やす。テーピングもした方が良いだろうか、と救急箱に伸ばした私の手を怪我人の男の子が勢いのまま触れようとするのが見えて私が手を引くよりも先に。
彼は薄く上気した顔を一気に青く染めて後退りする様にその場を這って私から離れて行く。と言うよりも、私に影を作っている背後の人物からだろうか。
アマ、と呼びかけられて誰かと勘違いしているのかと思いながら振り向けば、思いの外間近に居た様で目の前に聳え立つ大柄な男性に少し身を引いたのは言うまでも無い。
背後で、目の前の彼と同じゼッケンを身に纏った先程の怪我人の子の怯える声を聞くに、彼が何かしらやらかした様であるが。
………嗚呼、アマって
「……ふぅん、Aちゃんって言うんだぁ」
『君は初めましてだね。改めまして、マネージャーの月野Aだよ』
「かぁいいじゃん、マネ子ちゃん♪」
『ありがとう』
ずい、と私に顔を寄せる彼の前髪が私の顔に触れそうな程に近くを掠めて行って擽ったい。そういえば、チームメイトと反りが合わないらしく、私が訪れるタイミングで丁度部屋の中に居なかった選手が居たことを思い出す。見た事が無い顔なのは恐らく彼がその当人だからだろう。
でなければ、こんなに印象的なショッキングピンクの瞳を忘れる事は無いだろうから。珍しくて綺麗な色味だ、と思う私を見透かしたかの様なタイミングで「キレーな目」と彼は私を覗き込んだ。
「食べてもいい？」
『だめ』
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作者名：信楽
| 作成日時：2022年12月25日 2時
