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私にしてみれば少々興奮したくらいで済むならなんて事は無いのだが、そう思って伝えた言葉にオレンジ髪の長身君は「それでも謝らねぇと」と律儀にもう一度頭を下げる。
『じゃあ謝罪は受け取るね。ありがとう』
「おう」
真面目な子である。私と目を合わせると慌てて視線を逸らしはするが、できるだけ顔を見て話そうとしてくれるあたり教育がなっている子だ。でもそんな真っ赤になるなら無理しない方が良いとは思うのだが。特に鼻なんてかなり赤らんでいて……否。
『……もしかして、鼻怪我したの? 少し赤いね』
「え、は、うお!?」
「はっ、お前狡いぞ!!!」
「息吹き返してる……」
近寄って見れば、恥ずかしくて赤くなった類のものでは無い様だ。突然間近で視界に入り込み、彼の頬を両手で持って確認する私に上擦った声を上げ、目を見開き固まる彼に向けて誰かからの野次が飛ぶ。
チラリと視線を向ければ、私へと向かう直線上に居る人を掻き分けて茶髪の男の子がこちらへ近付いて来るのが見えた。目を瞬かせながら動向を窺っていれば、彼は私の前に来るとズイッと私に顔を寄せて、そして眩しそうに目を瞑って顔を離した。
「ま、マネージャー……俺も怪我したから其奴よりも俺を見てください!」
『嘘をつく子は苦手なの……怪我は無いに越したことはないよ』
「ふっ、ぐぅ!」
「お前怖いぞ……」
私も同感である。『怪我したなんて聞くの怖いから。嘘つかないでね?』と首を傾げて笑いかければ、彼は胸を押さえてその場に倒れ込んだ。周りがギョッとして見るのも気にせず、というか気にする事が出来ない状態なのだろう。
ここまでオーバーリアクションな人も珍しいな、と薄く笑みを浮かべて眺めていれば、不意に私の耳に「國神ー!?!?」と叫ぶ誰かの声が届く。
『あら』
「お、オーバーヒートしてる……」
『ごめんね、顔近づけすぎた』
「ぅ、っす……」
そういえばずっとあの状態のままだった。鼻は赤くなってはいたが特に異常は見られなかったと上の空の彼に告げて、念の為に救急箱から湿布を多めに取り出す。そして、それを倒れた彼に声を上げた隣の男の子に手渡した。
『あなたも何処か痛そうにしてるし、良かったら貼ってね』
「っ、て、てててがッ」
『あ』
私と手が触れた事で故障した機械の様にカタカタ震え出す彼に苦笑する。どうしようと思いを巡らせた瞬間、「余計な負傷者を三人も出すな」とモニター越しにお兄さんに怒られてしまった。すみません。
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作者名:信楽 | 作成日時:2022年12月25日 2時